MENU

記事を読む

記事を読む

建築家 青山善嗣✖️現場監督 宮脇隆司「難しいほうが面白い」

建築家 青山善嗣✖️現場監督 宮脇隆司「難しいほうが面白い」

建築

地域社会の発展に貢献した優秀な建築作品を表彰する富山県建築文化賞。51回を迎える栄えある賞にノミネートされた一般部門10点・住宅部門各13点の中から、見事受賞された方々にインタビューを敢行。今回は、「住宅部門」優秀賞「愛宕町の家」を手掛けた青山建築計画事務所の青山善嗣さんと、施工を担当した髙田建設で現場代理人の宮脇隆司さんにお話を伺ってきました!

第51回富山県建築文化賞 優秀賞 「愛宕町の家」 
竣 工 2018.9
構 造 木造2階建て
設 計 有限会社青山建築・計画事務所(青山善嗣代表取締役)
施 工 髙田建設株式会社(高田実代表取締役)
性 能 認定低炭素住宅

 

ラボ

まずは、優秀賞の受賞おめでとうございます!青山さんは今回で7度目の受賞、高田建設さんも同じく7度目の受賞となりますが、2社でタッグを組んでの受賞は初めてですか?

青山さん

そうですね。髙田建設さんとはこれまで4度一緒にお仕事をさせて頂きましたが、今回受賞した「愛宕の家」は2度目です。初めて仕事をした時の髙田建設の現場監督が宮脇さんでした。この人なら信頼できると実感したので、「愛宕町の家」は髙田建設さんに無理を言って「宮脇さん指名で!」とお願いしました(笑)。

6度も受賞。富山の建築設計界の巨匠、青山さん

今回で7度目の受賞となった青山さん

宮脇さん

嬉しいですね。青山さんが設計を手掛けられた建築物は以前から知っていましたし、いつかご一緒したいと思っていました。初めてお仕事をさせて頂いた時に、図面を見ると基礎の鉄筋量なども通常の2〜3倍あって、そこで面を食らい覚悟して取り掛かった記憶があります。図面もアンカーボルトの数や納まりのディテールまで、事細かく描かれていて本当に驚きました。

青山さんから絶大の信頼を得る宮脇さん

青山さんから絶大の信頼を得る宮脇さん

閉ざされつつも緑を公共へ提供する現代的な解釈を試みたアプローチ

閉ざされつつも緑を公共へ提供する現代的な解釈を試みたアプローチ

青山さん

図面はなるべく工事される方がわかりやすいように結構たくさん描きます。私は地震に強い建物を建てたいとか、暑さや涼しさという住んでいて快適な家がいいと断熱性や気密性にもこだわって設計しています。この2つは20年後に直そうとしたら大変な費用がかかる改修になるので、建主さんには「初期コストが多少かかってもその方がメリットがありますよ」と提案するようにしています。

青山さん曰く、施主のレベルが建築のレベルを引き上げるとのこと

建主さんからの高い要望が結果として建築の質向上に繋がると青山さんは話す

宮脇さん

断熱のための屋根下の発砲ウレタンも一般的なのは10cm程のもの。しかし、青山さんは20cm以上のものを選ばれます。これは今までの住宅でやったことがなく、本当に新しい発見でした。凄く高気密ですし、エアコン一台で十分快適に過ごせる空間に仕上がるんです。

ラボ

そんなお二人が組まれた2作目、今回受賞された「愛宕町の家」のコンセプトについてお聞かせください。

青山さん

典型的な中心市街地の宅地で、敷地は南北に細長く、しかも台形状の変形地。東西は隣家が近接していて、開放性があるのは道路に接する幅の狭い南北面という敷地でした。車を5台止めたいという建主さんの要望を守りながら、どうしたら建物内を明るく開放的にできるかを考えました。
私は長く愛される住まいをつくるためには、いつもそこに居たいと思えるような気持ちのいいリビングを作りたいと思っています。そこで光を取り入れる中庭を作り、奥まったLDKを明るい空間にするという形をまず思いつきました。そして本来であれば公共性の高い道路に面して作る玄関をこの奥まった中庭に配置して、いわば通り庭を楽しむアプローチというアイデアを加えたのです。

 

基本構想こそが設計の核となる

建物を魅力的にするアイデアの基本構想こそが設計の核となる

宮脇さん

青山さんのアイデアは細部にまで詰まっていて、木造の建物に対して門から中庭へのアプローチ屋根は鉄骨で設計されていました。図面ではしっかりと納まっているのですが、いざ細い鉄の板を斜めにきれいに取り付けるという作業はやってみると大変で…、そこが一番苦労した点かもしれません。

施工当時を振り返るお二人

施工当時を振り返るお二人

ラボ

その苦労もあって、玄関までのアプローチは、京都の細い路地裏のような奥ゆかしい雰囲気が出ていますね。

青山さん

アプローチ屋根も通りから見えるので、アプローチが圧迫感のないようにしたくて、いかにこの屋根を軽く感じられるようにするかがポイントでした。そこで薄い屋根を作ることができる鉄骨を選んだのですが、そのためにちょっと施工が難しい図面を描きました。こちらがイメージする設計図を描いても施工する技術がなかったら出来ないですよね。その意味で僕ら設計者を助けてくださるのが優秀な現場監督さんと職人さんなんです。設計者の仕事は現場に支えられているんです。

 

 

この住宅のテーマは「エントランスコート(内庭)」、キッチンや食卓の内庭として空間化するアイデア

この住宅のテーマは「エントランスコート(通り庭)」
キッチンや食卓の内庭として空間化するアイデア

宮脇さん

階段室もなかなか難しくて、階段の薄い壁の色々なところに棚や収納が設けられているので、そこは大工さんも時間がかかっていました。しかし、ただ理想を描いただけの図面はたくさんあるのですが、青山さんの図面は難しくても、必ず最終的にはしっかりと納まるように出来ているんです。最終の形まで青山さんの頭の中で正確に描かれているので、そこが凄いところです。

納めること以外にも様々な調整が現場監督の仕事と話す宮脇さん

納めること以外にも様々な調整が現場監督の仕事と話す宮脇さん。青山さんからは「現場は宮脇さんが主役だからね」と言われるという。

食卓から見たエントランスコート

食卓から見たエントランスコート(隣家の視線もカットされている)

 

ラボ

今回の受賞について、お施主さんのご感想はいかがでしたか?

青山さん

建物も気に入ってくださいましたし、今回の賞を頂けたことでさらに喜んでいらっしゃいました。建築の仕事の出来は建主さん次第なんです。ですから要望の高い建主さんだと(苦労も多いですが)その要求に鍛えられてこちらのレベルも結果として上がるという事が多いです。今回はそれに加えて敷地の条件も厳しかったのですが、チャレンジしがいのある案件でした。

 

2階からの採光を取り入れたリビング

2階からの採光を取り入れたリビング

宮脇さん

受賞後すぐに青山さんから報告を頂き、その時はとても嬉しかったですね。自分で手掛けたものが評価されるというのは、本当に喜ばしいことです。会社としてはこれまで何度も受賞していますが、私自身は初めてでしたので、仕事のやりがいにも繋がっています。

ラボ

審査の基準の一つに「富山らしさ」もポイントになっていました。「愛宕の家」で意識した部分はありますか?

青山さん

特にココが「富山らしい」といったコンセプトは設けていませんが、積雪や落雪、湿度など建つ場所の自然の特徴は常に考えて対処しています。それは富山で建てるのであれば当然の事だし、北海道や沖縄で建てるのであれば、その土地の自然環境に応じて作ります。場所が持っている要素は取り入れ守りつつ、富山らしさという概念を超えて、全国に発信できるものにしたいといつも考えて設計をしています。富山県建築文化賞は建築後1年経ったものを評価対象としているので、結果として地域性も評価しており、とても意味のあることだと思います。この賞が富山の人々から評価されて定着し、富山の設計者が「ぜひあの賞を取りたい」と大きな指標に育っていくように願っています。

 

 

「愛宕町の家」施工業者の皆さま
仮設工事 (株)ビルト・プレイズ 基礎工事 (株)山興工業
地業工事 日本海コンクリート工業(株) 鉄筋工事 (株)エイチエフェクト
コンクリート工事 三谷商事(株)北陸支店 コンクリート工事 (株)アツタ産業
防水工事 (株)プラッテクス 防水工事 (有)折戸リフォーム
木工事 (株)青山 鉄骨工事 金岡忠商事(株)
屋根・樋工事 (有)塚本工業 金物工事 (株)沢田商店
外壁工事 堀江硝子(株) タイル工事 吉田タイル
石工事 ゼネラルストーン(株) 左官工事 (有)川崎左官工業所
金属製建具工事 堀江硝子(株) 木製建具工事 (有)河島建具
硝子工事 堀江硝子(株) 塗装装工事 (株)野尻塗装店
内装工事 (株)だるま堂 家具工事 (株)G−Plan
電気設備工事 (株)たきでん 機械設備工事 太閤産業(株)

 

PROFILE

有限会社青山建築・計画事務所

〒930-2206 富山県富山市金山新12
076-435-6201
http://www.aoyama-architect.com

髙田建設株式会社

〒939-0251 富山県射水市土合1490
0766-52-0310
http://www.takatakensetu.co.jp