建築家 濱田修✖️大工 大野文也「日常✖️非日常」
地域社会の発展に貢献した優秀な建築作品を表彰する富山県建築文化賞。51回を迎える栄えある賞にノミネートされた一般部門10点・住宅部門各13点の中から、見事受賞された方々にインタビューを敢行!今回は、「一般部門」入選「あまよっと横丁」の設計を手掛けた濱田修さん(濱田修建築研究所)、施工を担当した大野文也さん(大野創建)にお話を聞いてきました!
第51回富山県建築文化賞 一般部門 | |
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入選 | 「あまよっと横丁」 |
所在地 | 富山市総曲輪3-12-2地内 |
建築面積 | 150.52m² |
延床面積 | 145.18m² |
竣工 | 2018年9月25日 |
建築主 | アトム(青井茂代表取締役社長) |
設計 | 濱田修建築研究所(濱田修代表取締役) |
施工 | 大野創建(大野文也代表) |
ラボ
受賞された率直な感想を教えてください!
濱田さん
建築文化賞の受賞は過去にもありますが、建築文化賞の一般部門は通年、公共建築などが選ばれることが多いです。しかし、今回受賞した「あまよっと横丁」は、店舗かつコンテナを利用した居酒屋横丁なので、少し異色ではありますが選んでいただき、非常に光栄に思います。
大野さん
施主さんから、あまよっと横丁の施工依頼を受け、設計をどうすればいいかを考えた時に一番初めに頭に浮かんだのが濱田さんでした。無機質なコンテナを、濱田さんにどのように工夫してもらい、どんな形にしてもらえるかを考えただけでワクワクしましたね!
ラボ
濱田さんと大野さんのタッグは、2年連続の受賞ですよね!
大野さん
凄く光栄です。信じられない気持ちです。ものづくりは、お金や利益にこだわりすぎない。「欲を出してはいけない」と常日頃思っています。
ラボ
あまよっと横丁のコンセプトを教えてください!
濱田さん
皆さんがお酒を飲みに出掛けられる時は、日常と少し違う場所に出向き、日頃のストレスなどを発散されると思います。あまり見かけない風景を意識して作ること、日常的ではない空間を創出するためには、相反するものを掛け合わせることが重要だと感じました。
鉄の塊で頑丈かつ閉鎖的なコンテナと、透明性があり衝撃を与えると割れてしまう脆いガラスを掛け合わせることで、「日常✖️非日常」の今まで見たことがない風景が生まれるのではないかと。非日常的な空間でお酒を飲むのは、きっと美味しく、楽しい時間になり得るのではないでしょうか。
ラボ
過去にも富山のまちなかに居酒屋横丁があったような…。
濱田さん
富山でも横丁や屋台村が10年に一度くらい出来ては、話題になり、飽きられてしまう傾向がありました。一方で、東京の新橋や福岡の中洲などの屋台は、戦後からずっと存在しています。それは何が違うのかと考えた時、「屋根」があるかどうかに着目しました。富山のような雪国かつ天候が不安定な地域だと、大きなフロアで全天候型のフードコートのような設えになってしまいます。ですが、そこを敢えて半屋外にして、屋台感を演出することにこだわりました。
濱田さん
あまよっと横丁は、焼肉屋もあれば、ビストロやバー、ピザもある。一つひとつの店舗(コンテナ)が独立した集合体なので、例えば一つの店舗が営業を辞めて抜けてしまったとしても、フードコートのような目に見える寂しさを感じることはあまりない。一つの店舗が抜けても、また他の店舗が入るといった循環を繰り返す。その循環を生むためにも屋根はいらないと考えました。
ラボ
施工面で工夫したところはありますか?
大野さん
コンテナは、現場とは違う場所である程度の内装を仕上げてから現場に運んできました。富山の雨量の多さを鑑みて、外壁の塗装はボーダーズペイントでこだわりましたし、内装を仕上げてから現場に運ぶので、配管などの位置は絶対に狂いのないよう正確に納めないといけませんでした。コンテナの耐久性を考慮して、濱田さんから開口部に鉄骨で補強して欲しいとの要望もありました。コスト的には少々かかりましたが(笑)。施工で特段苦労した点はないですけど、街中にコンテナを入れる作業が最も大変でしたね。
濱田さん
コンテナは鉄板の4面全体で支えるもので、どこかに穴を開けると急に弱くなり脆くなってしまう。表から見えないところ、壁の中に鉄骨で補強してあります。
建て方の時は、狭い街中に大きなコンテナが次々と現場に運ばれるので、ワクワク感が凄かったですし、職人さんの活気と現場の盛り上がりを凄く感じましたね!コンテナ自体はある程度出来上がっているので、今までの建て方と少し異色な雰囲気を味わいました。
ラボ
コンテナが積み上がって2階建て?に見えますね。
濱田さん
上に積んであるコンテナの中には室外機が入っています。法規的に上にコンテナを積んでお店を設けることが難しい。コンテナの下をくぐる箇所を設けて立体的な空間を創出しています。雑多な雰囲気を作りつつも、カッコよくクールな空間を作りたいなと思いました。
大野さん
単なる平屋ではなくて、コンテナを積み重ねることで、ガラス張りのデザイン性が活きていると思いますね。
ラボ
お二人は近年、よくタッグを組まれてお仕事をされていると思いますが、濱田さんから見た大野さんはどんな方ですか?
濱田さん
大野さんですか?やる気だけはあります(笑)。作ることに一所懸命ですし、施工者の技術や腕はフォローすることが出来ますが、このやる気やモチベーションは本人次第。私が施工者に求める重要なところですね。予算ももちろん大事ですが、仕事に対して本当に真摯に取り組んでくれ、現場も自然と楽しい雰囲気になっています。設計者のイメージを実現してくれる人ですね。
大野さん
やる気だけ(笑)。
ラボ
大野さんから見た濱田さんはどんな人ですか?
大野さん
数年前、八尾のとある物件で濱田さんと知り合って、それからずっと濱田さんと仕事がしたいと思っていました。まず、濱田事務所さんの図面は細かくて見やすいです。これまで6件ほど仕事をさせていただきましたが、常に新しいことにチャレンジさせてもらっています。濱田さんには建築のことやクライアントへの対応の仕方など、本当に勉強させてもらっています。ある意味、独立してからの師匠みたいな存在ですね。将来、事務所を移転する時には濱田さんと一緒に面白いことをやりたい。それが当面の目標ですね。
ラボ
最後に、あまよっと横丁が受賞したポイントを教えてください!
濱田さん
まちなかの狭い敷地だからこそ、コンテナの良さを発揮できました。あらかじめ別の場所で作って置くだけなので裏側を仕上げることもなく、ギリギリに配置しても大丈夫。狭い敷地にとても相性の良い工法だと思います。
世の中にコンテナで作られた建物や施設はなくはないです。ただ、コンテナの使い方や施工として新しいデザイン加味したところが良かった。それが「ガラス」です。富山は市街地の空洞化が進んでいるので、そこに賑わいを作るのが施主の考えでした。賑わい創出のためのデザインとして評価して頂けたのではないかと思います。
大野さん
コンテナを重ねたり、並べたりとただ置いただけではないです。ガラスのデザインを用いた斬新ところだと思います。それが上手くマッチしたと思います。コンテナは将来的にはお店だけでなくて町屋、空き家、人の住まいにも浸透していくのではないかと思います!
「あまよっと横丁」 施工業者の皆さま | |
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外構工事・基礎工事 | 椻下建設(株) |
仮設工事 | (有)CURE |
木材 | 南陽吉久(株) |
金属建具 | 総合硝子工業(株) |
金属工事 | (有)新生製作所 |
大工工事 | 大野創建 |
電気 | (株)シンコー |
給排水設備 | (株)タイト |
断熱建材住設 | ヤマイチ(株) |
内装 | (株)エビークス |
塗装工事 | (株)ヤマトコ |
家具 | (株)キタダ |
左官タイル | 米谷左官 |
厨房 | (株)フジマック |
サイン | (有)真栄工芸 |