つくり手と巡る!富山のケンチクの楽しみ方 Vol.2 −TOYAMAキラリ(前編)–
みなさんこんにちは!毎日「富山のことをもっと知りたい!」と富山愛が止まらない“富山オタク”ことちゃんです。
建築めぐりを趣味とする私が、設計者さんのご案内のもと“富山のケンチクの楽しみ方”をお伝えしていきます!今回ご紹介するのは、みなさんご存知!富山市の「TOYAMAキラリ」です。
TOYAMAキラリは、2015年に富山市の中心市街地にオープンした複合ビルです。中には富山市立図書館、富山市ガラス美術館、銀行、カフェ、ショップが併設されています。観光客からまちの人たちまで、多様な人々に幅広く愛されています。
新国立競技場などを手掛ける日本の代表的建築家 隈研吾さんが中心となって設計されています。TOYAMAキラリの設計・監理を務められた、元 隈研吾建築都市設計事務所設計室長で、現在は本瀬齋田建築設計事務所(愛称:サモアーキ)の齋田武亨(サイタタケユキ)さんに、ケンチクの目線から見るTOYAMAキラリの“楽しみ方”をご案内いただきます!
ことちゃん
おはようございます!富山の建築めぐりの大人気スポット、TOYAMAキラリを設計された方にお話しを伺えるなんて・・・!贅沢すぎてワクワクしています。
齋田さん
おはようございます!TOYAMAキラリのプロジェクトのために2013年から富山に住み始め、隈さんと議論を重ねて設計しました。さっそく外観から見てみましょう。
ことちゃん
齋田さんにとってはお住まいを移してまでの大プロジェクトだったのですね。TOYAMAキラリの外観はインパクトがあるようで街の景観にも馴染む不思議なデザインだなと感じています。外観はどのようにデザインされているのですか?
外観ポイント①「富山らしさ×この街の風景」
齋田さん
最初に外観を考える時に隈さんが「富山らしい風景と、この街の風景をうまく併せた外観にしたい」と話していました。特に“富山らしい風景”は、日の光を受けた立山連峰の山肌を表現したいと考えました。
隈さんは朝一で富山に出張に来ることが多かったので、 朝日の光を受けてキラキラしてる立山連峰を見ることが多かったようです。その光沢を、富山のリーディング産業であるアルミとガラスを使って表現しようと考えました。且つ、あまり光を主張しない落ち着いた素材も組み込みたいと考えた時に、銀行の元々の建物が御影石をふんだんに使用していたので、石を素材として採用しました。
また、かつて“この街の風景”だったTOYAMAキラリの場所に建っていた百貨店「大和(ダイワ)」が縦ストライプの美しい建物だったんですよ。立山連峰の山肌・銀行の建物・大和の建物の3つの表情を掛け合わせた外観にしよう決まりました。
ことちゃん
街の歴史へのリスペクトがデザインに込められているのですね。キラリの外観は、一日の中でも表情が変わりますよね。私は特に夕暮れ時が好きです!
外観ポイント②「一日の中で変化する表情」
齋田さん
おぉ!さすがですね!昼間は一つの塊のように見えますが、だんだん夜になっていくと中が明るくなって薄いベールをまとい、奥まで見えるようになっていきます。
夕暮れ時はそのバランスが一番良いと思っています。夕暮れのキラリを好きって言ってくれる人は「センスあるな」って思いますね(笑)。
ことちゃん
職場から近いのでいつも見惚れています。3つの異なる素材でストライプを表現しているとのことですが、石とアルミとガラス窓の配置バランスはどんな意味があるのでしょうか?
外観ポイント③「工夫されたグラデーション」
齋田さん
キラリは、隈さんの代表的な手法「小さな面が集合してできたような建物の作り方」の分かりやすい例だと思っています。面が1000枚くらい集まって出来ているデザインですね。一つの面の扱い方をどのようにデザインできるかを毎回チャレンジしています。
今回の外壁は、オフィスだったり図書館だったり、複合的な建物を一つのデザインの中で様々な用途に対応していけるように、グラデーションで解決する方法を考えました。
ことちゃん
複合施設だからこそ施された、不均一なパネルの配置と立山連峰の山並みの景観がマッチしていますね。かっこいい。
齋田さん
なんとなく上から下に向かって開口の比率がグラデーションで変化するように設計しています。上層階は銀行のオフィスフロアなので、なるべく外が見えて日の光がたくさん入るように窓を多くしています。下の階層は図書館や美術館のフロアなので、あまり日光が入らないよう8割程を壁にしています。
また、横方向のグラデーションにもなっています。銀行の元々の建物は御影石が特徴的だったので、キラリのデザインにも取り込むことにしました。その為、銀行側の入口は石を多く使用しています。右側の入口に向かってアルミの割合が増えていっています。
ことちゃん
上下・左右でグラデーションの意味が変わっているのは面白いですね。複雑そうな設計ですが・・・!
外観ポイント④「薄い面の集合体を実現」
齋田さん
お施主さんが原寸大の見本品を工場で再現してくれたことがとても力になりました。通常、建築家は石の部分を厚みのあるデザインにしたがるのですが、隈さんはできるだけ薄い面が集まったものを理想としています。
なので、わざわざ厚みのある面の横の部分を黒く塗って薄く見せるようにしています。これは、原寸大の模型を隈さんと一緒に確かめながら設計を進められたからこそ実現できた気づきだと思っています。
ことちゃん
お施主さんの熱意も素晴らしいですね。パネルの部分に石が使われていると気づいている人ってそんなにいないんじゃないですか?自然に混ざり合っていますよね。曇りの日は特に街の景色とも馴染んでいますね。
齋田さん
曇り空の日のほうがアルミが柔らかく光ってくれます。僕は曇りの日の表情のほうが好きですね。次は後ろ(南側)に行きますか?
ことちゃん
後ろはまた、表情が全然違いますよね。
外観ポイント⑤「壁面緑化と太陽光パネル」
齋田さん
表側に比べると道幅が狭いので、どーんと同じデザインにしちゃうと圧迫感が強くなってしまいます。なので、上の方を引っ込めて圧迫感のないようにし、歩く人たちと距離が近いので、緑を取り入れようと壁面緑化を施しました。
後ろ側には美術館が入っています。美術館の外壁に直射日光が当たると熱負荷で作品によくないので、外側に少しでも日よけになるものをと考え、太陽光パネルをたくさん取り付けて美術館への熱負荷を軽減させるようにしました。
ことちゃん
美術館を守る工夫とエコな取組みが掛け合わさっているんですね。
外観ポイント⑥「二つの建物を一つのデザインに」
齋田さん
実は、キラリは2つの建物が合わさってできているんです。パネルを使っている理由の一つには、つなぎ目を隠す目的もあります。2つの建物をどのように一つにデザインするかという工夫も施しています。
ことちゃん
2つの建物には見えなかったです。言われてみないとわからない技術が外観だけでも盛り沢山ですね!
齋田さん
キラリは設計だけでも30人以上の人たちが関わっているプロジェクトです。内観もこだわりの技術が満載ですよ。
この場所に建てるからこそ外観に取り入れた一つひとつの要素を、丁寧に拾い集めることが出来た機会となりました。
後編は、TOYAMAキラリの内観をご紹介します。つづく・・・!