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ラボ
まず初めに、「造園業」のお仕事について教えてください!
中曽根さん
造園業と言ってもかなり幅広くなりますが、基本的には植栽や芝などの“緑を扱う”仕事です。ただ、他の建設関連の仕事と違う点は、植えて終わりではなく、植物なので施工した後の管理が必要。長い時間をかけてお客様との信頼関係を構築していくようなイメージです。
ラボ
中曽根さんは主にどんなお仕事をされているのですか?
中曽根さん
会社としては、これまで富山空港や市内の稲荷公園など、公共の大きな施設などを手掛けてきました。敷地面積も広いので、他の造園業者さんと協力して行うことが多いです。場所によって見た目が違っては、お客様に迷惑をかけるので、他の業者さんと息を合わせてやることが求められます。
ラボ
公共工事はルールも厳しそうですね…。
中曽根さん
見た目の仕上がりは当然ですが、雪囲いで番線が刺さらないように縄で縛るなど、安全性がかなり重視されます。最近では、富山市内にある公園の復旧工事を当社で手掛けました。お子様やお年寄りも利用される場なので、安全性に配慮しながら、植樹や芝張りをはじめ、擁壁の設置から土間工事、フェンス、ダスト舗装など、ほとんどを自社で施工しました。
ラボ
いわゆる「緑」以外の工事も色々できるんですね!
中曽根さん
そうですね(笑)。それぞれの分野に強い社員が揃っているので、あまり外注せずに極力自社で請け負うスタンスです。造園業を手掛ける会社としては富山で社員が一番多く、様々な工種のプロが揃っていることが強みです。
ラボ
家業である会社を継ごうと決めたのはいつ頃ですか?
中曽根さん
当時、私が小学生の時、創業者である祖父が労働大臣表彰を受賞した際に、お祝いの席で「おじいちゃんみたいになりたい」とみんなの前で言ったような記憶があります(笑)。高校生の時は、学校の先生になるか家業を継ぐかで迷いましたが、僕は6人兄弟の一番上なので、自然のなりゆきですかね。
ラボ
6人兄弟ですか?!高校卒業後はどんな道を?
中曽根さん
千葉大学の園芸学部に入りました。1クラスに80人程いましたが、役所の公園緑地課などを目指すような人が多くて、家業の後継ぎは僕ともう一人くらい。そこで造園の基礎の基礎を学び、卒業後は東京の従業員100人程の造園会社に入社しました。中東やアジア圏で庭園を手掛けたり、技能五輪の造園部門で日本人初の世界チャンピオンになった人もいて、かなり幅広く様々な仕事をやらせてもらいました。
ラボ
そんな刺激的な会社を辞めて、富山にUターンしたきっかけはなんですか?
中曽根さん
祖父の体調面と、5年間修行した区切りもあったので富山に帰ることにしました。当時も今も中曽根造園は、社長に「ああしろ」「こうしろ」と言われて動く会社ではなく、先頭に立って現場を仕切る職人が多数いるので、働きやすいです。
ラボ
職人さんは何名在籍されていますか?
中曽根さん
20人程の会社ですが、今日は15人程現場に出ています。私は専務という立場ですが、今もメインは現場。職人としての仕事をしながら、話があれば打ち合わせに行きます。以前勤めていた会社の社長から、「最終的には経営者になるだろうけど、職人の汗を流して大変なことを勉強しろ」と言われたことが、今でも心に残っていますね。
ラボ
外仕事ですし、環境的にも大変なことなどありますか?
中曽根さん
寒い、暑いは、当たり前ですよね。それに加えて、現場では色々な職種の人と一緒に仕事するので、最初は他の職人や親方に怒られたり、大変でした(笑)。ただ、人間関係ができると同時に、2~3年程経験を積んで、仕事を任せてもらえるようになってからは、仕事って面白いと感じることが増えてきました。
ラボ
(私は寒いのが苦手ですが)仕事の辛さや厳しさより、造園の魅力が上回りますか?
中曽根さん
そうですね。造園の面白さや魅力を感じる前に辞めてしまう人もいますが、自分で現場を采配出来るようになったら、それはやっぱりやりがいがありますよね。
最近では、環水テラス『点点茶(テンテンティー)』の植栽に携わらせてもらいました。当初描いていたイメージと現場に実際の木を持ってきた時のイメージが少し違ったので、木の配置を変えるなどして、その場で試行錯誤しました。自分が描いたイメージに近づけ、クライアントの要望に応える。良いものを目指してお客様に満足して頂けたら最高ですね。
ラボ
造園業も時代によって変化していますか?
中曽根さん
建築様式が変わり和室が減っているので、いわゆる和風庭園は少なくはなっていますが、逆に外構の仕事が広がってきています。また、天然芝じゃなく手入れのいらない人工芝を選ぶ人も増えています。ただ、お店や旅館、ホテルなどでは、和庭も当然残っていますし、知識も技術も磨いておかなければいけません。茶庭を手掛けるならお茶の世界を知らないと思い、ずっとお茶を習っています。
ラボ
すごい!勉強熱心なんですね。
中曽根さん
「“園”をつくる」のが造園業だと捉えると、緑だけでなく、分野は幅広い。基盤整備も重要だし、擁壁作りもそうです。頼まれたことだけではなく、自分が前向きに興味を持ったら、どこまででも追求できる。草木照らすのに、照明をどう当てればいいか。そんなところも勉強した方がより良いものができる。奥が深いです。
ラボ
最後に学生や若者にメッセージをお願いします!
中曽根さん
土木や建築の知識を持ちながら造園業に就くと、アドバンテージがあります。当然の事ですが、緑が好きな人にはオススメの職種ですし、緑が持っている癒しやパワー、四季で表情が変わるのもこの仕事ならではかなと。淡い色の花から咲き始めて、紅葉も綺麗。富山だと雪囲いの中で雪が積もった庭も風情がありますよね。おじいちゃん、おばあちゃんと話をしてコミュニケーションを取るのも立派な仕事です(笑)。とにかく色々な人と関われる。造園は決して一人ではできない仕事なので、本当に面白いです!