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連載記事

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ケンチクノワ

富山を拠点に、県内外で活躍する個性豊かな建築家12名によるリレーブログ。
テーマに沿って、12名の建築家が建築設計に対する想いや考えを綴り、バトンを繋ぎます。
2周目のテーマは、「完成までのプロセス(人との出会い)」です。

※毎週火曜日に掲載

山田哲也建築設計室

山田(やまだ) 哲也(てつや)


テーマ vol.2完成までのプロセス(人との出会い)

「終わりのない物造りに携わる」

3月生まれの山田です。学生時代は順番を決められると高確率で最後の方になりました。今回のリレーブログも勝手に50音順で順番を決められ、最後になっています。

今回のリレーブログでは、初回だけ時間の余裕があるという利点がありましたが、その後は前述の方々とできるだけネタが被らないようにと気苦労が絶えません。まだ2巡目ですが早速困ったテーマが与えられました。

私がプロジェクト中に出会う人というのは前述の方々と大差がないですし、設計以外の方と共に造り上げる事によるメリットはいろんな方が述べられているのでそちらを参照していただければと思います。
そういうわけで今回は、本来のテーマからは外れますが、法澤さんが綴られた「建物は完成するのか?」という文が気になり、内容もとても共感したのでそちらに絡みたいと思います。

60年も前にメタボリズムで建築や都市の新陳代謝が唱えられましたが、改めて個人が所有できる物に限定して考えると、こんなにも更新が許容される物は建築や衣類以外にあといくつあるでしょうか。

多くの商品は当然完成形として流通し、食器は料理が盛り付けられれば完成を迎えますが、我々が設計する建築は竣工という形で一旦工事の完了を迎えた後も、所有者や規模、更には用途が変わる可能性を備えています。とは言っても設計する際には将来の事を全て予測しかねるので、その時点での与件を満たし可能な限り更新に対して配慮した設計をすることが、法澤さんがおっしゃる「建物の人生を有意義にする」ために私たちができる事であり、建築ストックの活用という社会的課題のためにも私たちに必要なスキルとなっているのだと思います。

「建物の人生を有意義にする」ため、私たちは工事完了後も施主との関係を続け、終わりの無い物造りに携わるわけですが、だからこそ人との出会いが絶える事がありません。自分の設計じゃない建築を改修する際には、解体した部分から立派な梁が現れたり、当時の職人がつけた墨を見つけたり、当時の設計者や施工者の想いの断片を見つける事があります。そんな時は、顔も名前も知らない彼らと時を超えて出会えたような気がし、当時何を大切に考えて造ったのか対話しようとします。そんなロマンチックな出会いがあるのも建築設計の魅力だと思います。

いつか私が亡くなった後 もしかしたら私が設計した建築が改修されるかもしれない。その時に次の設計者に私の想いが伝わるような設計をしていきたいと思います。

某プロジェクト解体中の様子

某プロジェクト解体中の様子

山田哲也

PROFILE

山田哲也建築設計室

山田哲也

1976-      富山県生まれ
2000-      金沢工業大学大学院修了
2000-2002   黒川建築設計事務所
2003-2007   栗原正明建築設計室
2003-2007   ワークステーション
2009-      山田哲也建築設計室
2015-      金沢工業大学非常勤講師

一級建築士
応急危険度判定士

日本建築家協会 所属