連載記事
テーマに沿って、12名の建築家が建築設計に対する想いや考えを綴り、バトンを繋ぎます。
第1弾のテーマは「建築設計との出会い」です。
※毎週火曜日に掲載
本瀬齋田建築設計事務所
テーマ vol.1 建築設計との出会い
「空間の持つチカラ」
『あの建築はすごく良く出来ているけど、空間がない』
大学時代の私は、謙遜でもなく、平均に遠く及ばない学生だった。当初は漠然と建築学科に在籍していただけであったが、研究室に入り師事した恩師の一言で『建築設計』に対する見方や考え方がガラリと変わった。設計の勉学にのめり込み、その後に建築設計を職業として選び、今も尚、たのしみ続けている『建築設計』との出会いは、冒頭の言葉に出会えたことだったと思う。
この言葉は、とある建築を見に行った雑談の中で発されたものだった。著名な設計者による建物の外観デザインは、実際にキレイだったし、間取りもカッコいいと思った。恩師は具体的な内容を示さず、すぐには理解に及ばなかったが、自分にとっての「建築ならではの魅力とは何か」を自身で考えるきっかけになった出来事である。
建築とは、立体物であって、人間が内側に入れる大きさを有する場合が多い。さらに、人生のような、長い時間を共にする場合が多いことも特徴的であると思う。そのような特徴をもつ建築において、「立体的に体感できる魅力」に価値があるように感じている。冒頭の言葉を聞いて以来、今でも自分の『建築設計』の価値観は常に、「空間」の魅力を伴うものでありたいと願っている。
10年間在籍した隈事務所でも、新しい「空間」との出会いがあった。「亀老山展望台(1994年・愛媛県)」は、建築物が山の地形に完全に埋め込まれ、外観やディテールどころか、自然豊かな緑の斜面とコンクリート擁壁による「空間」しか存在しない。それでも、周辺環境の眺望が最大限に感じられ、壮大な自然が感じられる素晴らしい場所になっている。建物の存在を消す目的で埋められ、その結果「空間」が際立ったのだが、「空間」のもつチカラを純粋に感じることができ、改めてその重要性を確信することができた建築であった。
『建築設計』には、快適な居住性や省エネ性、地域に根差した素材や構法など、様々な価値観が確立されているが、正解は存在しない。価値観との出会いは、そのまま新しい『建築設計』との出会いでもある。「出会い」はこの仕事の面白さであり、重要なトピックである、なんて考えていたら、このブログのテーマは5つのうち3回もが「出会い」についてなんですね、青山さん!!(テーマは青山善嗣さんが決めてくれたらしい)さすが年長者。
富山は、多様な価値観の設計者がいて本当に面白い。リレーされる皆さんの「出会い」もたのしみである。