連載記事
※毎週火曜日に掲載
法澤建築デザイン事務所
テーマ vol.3基本構想が生まれるまで(アイデアとの出会い)
「命名」
アイディア=名前
私たちの事務所では建物に「名前」を付けることがよくあります。「クラハウス」、「ハウス・マッターホルン」、「一二三ハウス」(詳しくは弊社websiteをご覧ください http://www.hosawakenchiku.com)。はじめの頃は「子供を育てる気持ちで」と名前を付けるようにしていましたが、名前を付けることとアイディアを構想することは同義なのではないかと考えるようになりました。
引出し
良い名前、良いアイディアは突然に生まれるものではありません。大切なことはアイディアの引き出し(ストック)をたくさん作っておくことだと思います。海外建築家の作品集をみること。先達の話を聞くこと。旅行に行くこと。コンサートを聴くこと。レストランで食事をすること。芝生の公園で寝そべること。知識として蓄積される引出しがあれば、いろんな経験から得られる引出しもあります。引出しは多ければ多いほど、構想過程において良いアイディアに出会う確率は高まります。
ひらめき
お施主様から設計依頼を受け、設計案の検討へ。まず敷地を見に行き、余条件を整理し、あらゆる可能性について模型やスケッチをもとにエスキスします。その過程で約9割の案がボツになりますが、ある時、全員が「これだ」と思うアイディア=カタチがでてくる。そのときに重要なのは、敷地を見たときの第一印象、そしてこれまでに蓄積された引出し。カタチを第一印象や引出しに照らし合わせ、ベストな提案であることを確認します。
命名
次なるテーマはコンセプト。荒削りのカタチにたいして、どのような物語(ストーリー)を描くことができるのか、設計チームでブレインストーミングを行います。物語とは、その建物で起こりうる様々な出来事をイメージし、一本の線で結ぶこと。その線こそが建物の核になり名前になります。丸や三角といった形の特徴にたいして名付けるときもあれば、敷地の固有性だったりもする。あるいは、美しいものへのオマージュの場合もある。何らかの名前を建物に与えたとき、言い方を変えるなら、核となる考え方を形に与えたとき、建物は子供のように愛らしい存在になります。
旅立ち
いよいよ、お施主様へのプレゼンテーション。建物のプレゼンテーションはお施主様へのプレゼントでもあります。私たちは名前とそれに付随するストーリーについて重点をおいて説明します。
カタチ(原型)をつくり、名前をつけ、育み、そしてお施主様のもとへ旅立たせていく。建物がいつまでも愛される存在であってほしいと、私たちは常に願っています。