連載記事
※毎週火曜日に掲載
青山建築計画事務所
テーマ vol.4建築と都市(周辺環境との関係性)
「場所性からなる建築」
3周目のテーマだった「基本構想が生まれるまで」面白かったですね。10人の設計者が、アイデアが生まれる瞬間をそれぞれの言葉で綴っています。アイデアが生まれる時の発想は同じことも違うこともあるけれど、共通していたのは建築への愛といってもよい「これしかない!を求める追求心」だと思いました。
さて今回から4周目の「建築と都市(周辺環境との関係性)」が始まります。住宅や商業建築、公共建築においても建築は必ずどこかの場所に建っています。「建築と都市」と言う時、建築は一つの個別の建物を指し、都市とは建物などが集まっているその環境と言ってもよいでしょう。どこかの場所に建つ建築はその場所の持っている環境と繋がっていて、その環境が持っている制約を受け入れざるを得ません。これを場所性といいます。
商業建築の建物は、自分の存在を主張しつつその建つ場所に合わせて外部の環境を整えます。公共建築では一歩進めて更に公共性の高い外部環境を整備しています。このように建築と外部環境は、その場所性を受け入れて整備され存在しています。都市とは個別の建築が群れて存在する空間であり、一つひとつの建築はその都市が持つ個別の場所性に大きな制約を受けているのです。場所性は国や地域など建物が存在する場所の地域的特性だけではなく、政治体制や社会体制によっても違ってきます。世界各国の街並みを観察するとそれがよくわかります。
「建築と都市」の関係は人が暮らしている「自分と社会」との関係にも似ています。自分が思っていることや考えていることすべてが他人も一緒に暮らしている社会の中では”みんな同じ”ということはありませんね。社会が持っているルールを守りつつだれもがバランスを取りながら暮らしているというのが実体です。自分のプライバシーを一番守ってくれるのが住宅という器ですが、家からドアを開け一歩外へ出ると社会という公(おおやけ)が待っているのです。家の外の環境はその地域の場所性の制約を受けるとともに社会という公共とも接しているということです。
自分の敷地に家を建てるのに場所性やら何やらと制約があるというのは面倒なものです。建築基準法という法律を守って建てるだけではダメなのかとも思いますが、これは法律ではないので必ずしなければならないことではないのです。つまり一人ひとりの思い次第なんですね。
住宅の玄関の外の空間は前述したように公共の空間に接しています。この外部空間を住宅が公共空間に接する場所ということで私は「小さな公共空間」と呼んでいます。家はプライバシーを守る住まい部分と玄関と道路に接する「小さな公共空間」から出来ているのです。私は家を設計するときにはこの「小さな公共空間」を必ずデザインしています。少しでもこの家の前を通る人が和んだりホッとする風景を街に提供したいと思っているからです。人は一人では生きていくことができません。家も社会や地域の中に存在することを避けることができません。設計という行為は、このような制約を理解しつつ社会との繋がりをどうデザインするかを模索するという行為でもあります。