連載記事
※毎週火曜日に掲載
本瀬齋田建築設計事務所
テーマ vol.4建築と都市(周辺環境との関係性)
「環境が刻む時間に寄りそう」
我々にとって周辺環境と建築との関係は大きなテーマです。周辺環境と建築とを関係づける方法はいろいろあります。
例えば、前回のコラムでは、周辺の風景から取り出したモチーフを内外のデザインに取り入れて、内側と外側を繋ぐという方法を、「風景を翻訳する」という言い方で紹介しました。他にも、形だけでなく使われ方を工夫することで、人の活動を外の環境から内側まで連続させるという方法もあったりします。そんな中で、今回はあえて、外から見た建築物の形「外観」についてお話したいと思います。
設計の授業では、外観について議論することはあまり無いかもしれません。中の使われ方が自ずと外観に現れるので、「わざわざ外観をデザインする必要は無い」という考え方もあります。
しかしながら、建物の周辺環境には、その土地が培ってきた地形や植栽、街並みなど、特有のリズムやカラーがあります。そういったものを良く観察し、建築の外観に反映することで、建物が風景の一部のようになり、周辺の環境が刻んできた大きな時間の流れを建築にも取り込むことができると考えています。
そして、そのような大きな時間の流れを取り入れることによって、たとえ建物の用途や持ち主が変わったとしても、その建築物のデザインが古臭くなること無く、普遍的な価値を持つことができると考えています。
建物の使いやすさに注力することはもちろん第一ですが、要望や条件に沿った建物であったとしても、将来的に用途が変わったりしてしまうことはあり得ることです。持ち主の気が変わってしまうことだってあるかもしれません。そのように個別の条件が変わったとしても、建築が変わらぬ説得力を持ってそこにあり続けるために、要望や条件に応えることに加えて、周辺環境を考慮して外観をデザインすることが重要だと思います。
外観というのはプランや断面形状に比べて、建築家の裁量に委ねられる部分が多い部分だと思います。平面図、断面図はお施主さんとの打ち合わせで何度も見てもらい、変更していきますが、立面図を描くときに考える屋根の勾配や建物の高さ、窓の形状、設備の配置、外装材の選定などは専門性が高いからかもしれません。その分、責任の多い部分でもあります。
建築物を見る時には、平面や断面だけでなく、立面にも注目すると、その建築家の考えていることが良く分かるかもしれません。