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無垢材をふんだんに使ったオシャレであたたかみのある家づくりが人気の前川建築で、現場を統率する土井さんに大工の魅力を深掘りしてきました!
今回の取材は、緑との暮らしづくりを提案するお店「niwanoso(ニワノソ)」にお邪魔してきました。このお店は立山町五郎丸にあり、前川建築さんが運営されています。
ラボ
学校を卒業してから今までの経緯を教えてください。
土井さん
高校を出て今の会社に就職して、この道一筋23年です。大工として主に現場で作業をしています。小さい頃から工作とか作り物、特に木工が好きな子供でした。父親も日曜大工が得意で、大工さんの手元のお手伝いをしたり、そんな姿を間近で見ていました。
ラボ
最初から、大工さんになりたかったんですか?
土井さん
いや、高校3年までは特に決めていなくて。野球部を夏で引退した時に、父が基礎工事の手伝いをしていた先に、僕もアルバイトに行かせてもらったんです。そこが前川建築の現場だったと言う縁で入社させてもらうことになりました。ちょうどその頃、NHKの朝の連続テレビ小説で「天うらら」が流れていて、女性職人がカンナ掛けをする姿を見て、「かっこいいなあ」と思ったんですよね(笑)。
ラボ
朝ドラきっかけですか(笑)。大工さんの見習いは厳しかったですか?
土井さん
私も最初は、大工といえば住み込みで親方からガンガンしごかれるイメージがありました。ただ、実際はそうじゃなくて、好きな仕事をしながら休憩中にお菓子を食べれるし、「楽しいなあ」という感じでした。現在の社長がその頃の兄弟子だったんですが、色々と教えてもらいながら、「仕事楽しいっす!」と言っていたのを覚えています(笑)。
ラボ
新人の頃は具体的にはどんな仕事を?
土井さん
ひたすら親方の手元で、片付け、掃除をやっていました。「サンゴカク(三寸五分)もってこい!」と言われてもなんのことかわからず、怒られながら覚える。そんな毎日でした。次から次へと新しい現場の工事に向かうので、完成した現場を見たのは仕事を始めてしばらく経ってからでした。その時は、自分の関わった建物がこんな風に仕上がるのかと、鳥肌が立ちましたね。
インタビューの合間に、niwanosoの近くにある現場にお邪魔しました!前川建築さんが施工する住宅の現場です。
ラボ
大工の仕事に難しさや苦労を感じたことはありますか?
土井さん
自分が新人の時は親方から「わかるか?やってみろ」と言われたら、「わかります!」と言い切って、見様見真似でやってみると言う感じでしたが、自分が上の教える立場になった時に、そういうやり方が通用しなくて少し苦労しました。
今はしっかりと細かいことまで伝えるように、そして若い子の言いたいこともしっかり聞くようにしています。押さえつけるのではなく、いいところは学ぶ。逆に若い子には、「優しすぎる!」と怒られますけど(笑)。
ラボ
これまで挫折はありましたか?
土井さん
基本的にはずっと現場で大工をしていますが、2年間ほど現場管理の仕事をしたことがあったんです。その時は、職人とは違う目線で工事全体を見ることができて非常に良い経験になりました。ただ、現場監督から大工にまた戻った時に、作業スピードが落ちていたり、若い職人が育ってきて、これまでの感覚でやれなくなっていたんです…。ある人から「がっかりした」と言われて、しばらく、いや2〜3年ほど落ち込みましたかね(苦笑)。
ラボ
そんな経験も乗り越えて今があるんですね!
土井さん
それまでは一人でこなそうとして、人に任せることが下手でした。無駄のない的確な指示ができていなかった。やはりチームでやることの大切さを今は感じています。新しい子が入ってくると刺激を受けて負けないようにという気持ちも湧いてきます。現場の職人さんたちもそうですが、新入社員とも出会いなんですよね。その出会いが自分の進歩に繋がっています。
ラボ
前川建築さんのように、設計から大工仕事までを自社一貫で行う会社のメリットは?
土井さん
みんなが理念を共有しているというのは大きいと思います。家を建てた後も施主様から電話がかかってきた時に、すぐに動けるのはチームとしての強みですね。
また、社員大工同士で、毎日のように議論を交わしたりできるのはすごく刺激になっています。仲間に「あれはこうした方が良かったよ」と言われる時はグサッときますが(笑)。高め合っていくためにはとても大事なことです。
ラボ
大工として大切にしている信条を教えてください。
土井さん
ある施主様から「土井さんは仕事を楽しんでるね」と言われたことがありました。その時は本当に嬉しかったです。自分の子どもたちにも、「父さんの仕事は楽しいよ」というのを伝えていますし、大人のそういう姿を見せるのはとても良いことかなと。現場でも雰囲気を明るく、楽しくやることを大切にしています。
ラボ
最後に、建築を志す若者たちにメッセージをお願いします!
土井さん
本で勉強するよりも、行動するから疑問が湧いてくる。そのためにまずは「挑戦」です。たくさんチャレンジしてほしいと思います。一生懸命やった時の失敗には、必ず意味があると信じています。無我夢中でやることで、必ず楽しさに繋がると思いますよ。