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連載記事

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職人タイムス

現場で働く職人さんを紹介する「職人タイムス」12回目は、山﨑広介箱庭設計代表の山﨑広介さんです。建築の顔となる玄関や庭を、磨き抜かれた審美眼と秀逸なセンスで魅せる庭師。山﨑さんが植栽を手掛けた「花水木ノ庭」でお話を伺いました。興味深いお話が満載です!
職人タイムスvol.12  山﨑広介箱庭設計 山﨑広介さん

富山市南央町の「花水木ノ庭」

山﨑さんが植栽を担当

ラボ

「山﨑広介箱庭設計」。まず、ネーミングがオシャレですね!

山﨑さん

「山﨑造園」でもよかったのですが、一人でやる仕事なので、あまり大きな風呂敷を広げてやるよりも、できることをやりたいなと。造園業や庭師と聞くと、親方と弟子がいて、どこか気難しい感じもしますが、もっと造園を身近に感じてもらいたい想いもあって名付けました。

ワイルドな風貌からは想像できないような繊細な技を持つ庭師さん

名刺もカッコいい

ラボ

今は山﨑さん一人でお仕事をされているんですね?

山﨑さん

そうですね。60歳くらいになったら誰か雇いたいですね(笑)。現場によっては職人仲間にサポートしてもらっています。庭師だけでなく、お施主さん、建築家、大工さんらを含めてみんなでチームになって、一つのゴールに向かってプロジェクトを完結させるのが一番イイ。お客さんとの打ち合わせで、「これがいい」、「じゃあこうしましょう」と、自然発生的に会話がたくさん出てくる時は良いものが生まれやすいです。

ラボ

学生時代から「庭師になりたい」と決めていたのですか?

山﨑さん

全くです。大学は英米文学部でしたし(笑)。日本にいながらアメリカの学校に通える大学が京都にあって、そこに通っていました。めちゃくちゃ多国籍で、4年間本当に刺激的な日々を送っていました。

ラボ

今のところ「庭師」への道筋がイメージ出来ません(笑)

山﨑さん

その学校を卒業するのがもの凄く大変で、課題も多く就活をするのも難しいほどでした。企業に内定もらい、あとは悠々自適に…なんて一般的な学生生活ではなくて。やっと卒業が決まって、一旦やることもないので富山に帰ることになり、いろんなタイミングが重なって植木屋さんに就職することになったんです。

ラボ

元々、職人の世界には興味があったんですか?

山﨑さん

小さい頃から手を動かしたり、絵を描くのが好きだったので、得意なことを生業にしたいとは思っていました。数ある選択肢の中で庭師を選んだのは、京都での経験が大きかったと思います。

ふらっと街を散策すると、そこはさすが京都。いろんなお寺だったり、ちょっとしたところに石の橋が架かっていたり、どこにでも「景色」が溢れていました。それを見て回るのが凄く好きで、自分もそうした風景を作りたいと思ったのがキッカケでした。あとは、「庭師」の響きが良いなと(笑)。

山﨑さんが現在手掛ける大沢野の現場。住宅の庭に落葉樹の林を計画

山﨑さんが仕入れた落葉樹

「車を止めてからこの林を通り抜けて家に入る。ワクワクしますよね」、そう言いながら笑みをこぼす山﨑さん

ラボ

なるほど! そこから修行の道に入るわけですね。

山﨑さん

はい。20人ほどの会社で、造園業では富山県内の大手に入る会社でした。ゴミの掃除から始めて、入社したての頃はカレンダーに毎日「×」をつけるくらい、休日が待ち遠しかったです(笑)。ですが、自分の中でやり方を覚えると、気持ちも体も楽になってきて、ある時にコツを掴んだら途端に楽しくなってきました。入社して5〜6年経った頃です。

ラボ

庭師の仕事はどのように進めていくのですか?

山﨑さん

「仕事は段取り8割」と言われるように、現場に入る時にはほぼ完成していて、あとは何も考えなくても手が勝手にやってくれる感覚です。手元は勝手に動いているけど、次のことを考えながら、「あの庭には、あの木が合うかも」と思いながらやっています。頭と体が別々に同時進行で動いている感じです。ただ、土を均している時はまさに無の境地に入ります(笑)。日が暮れて外が真っ暗なり初めて「あっ!もう夜だ」と。

「体が2つあればいいのに」と探究心は尽きることがない

ラボ

依頼を受けた「庭」はどのようにつくりあげていくのですか?

山﨑さん

お施主さんと納得いくまで話をして、お互いが共有したイメージを崩さないように心掛けています。ただ、施工が進むに連れて材料や手法はどんどん変わっていき、階段を一段上がったら選択肢がまた出てきてと、ジグザグしながらゴールに辿り着くイメージです。スタートとゴールのイメージが共有できていて、最終的に「良かった」と言われるように心掛けています。

茶人の遊び心に応える装植。時にはアーティストとしての一面も

海岸でコツコツ集めた石を座敷一面に広げた鶴座を作り、川で採取した流木を配して松食い鶴を表現した

流木と古瓦を用いたインスタレーション。照明を使用し躍動感を演出

ラボ

山﨑さんを見ていると、仕事を楽しんでいる感じがとても伝わってきます!

山﨑さん

僕はあまり仕事とプライベートの境目がなくて、生活するように仕事をしたいと思っています。家族とどこか遊びに行っても、石や木があったり、海や山などの素晴らしい景色を見るだけで良いインプットになります。寝ている時も「メモしておかないと忘れるな」と夢に出てきたり(笑)。けど、全然苦じゃないんです。

「人の縁」に恵まれてここまで来れたと、常に感謝の気持ちを持っている

ラボ

山﨑さんの庭づくりのこだわりを教えてください。

山﨑さん

まず、庭を見るときに、植物や石を省いた状態を想像してみる。この時点でカッコいい庭は何をしてもカッコいいんです。一生懸命作り込んで作り込んで、何の作為性も見せない仕上がりが一番かっこいいと思っています。

山﨑さんが手掛けた富山市内の個人宅の庭。

この2つの住宅は同じ敷地にある二世帯でその間に大きな中庭が。 落葉樹の林を抜けて子供が行き来するそう。

ラボ

作り込みながらも奇をてらわない庭がヨシですか?

山﨑さん

「自分の作品を見てくれ!」といった想いは全くないですし、庭や玄関はそんな場所じゃないと考えています。一番は、自分に期待してくれる人に応えたい。あえてこだわりを言えば、「無個性な個性を大事にする」こと。一見誰にでもできそうですが、「何気ない庭」が普遍的な良いものではないかと考えています。

庭師はバランサー。適材適所が大事と話す

ラボ

今後の目標や夢はありますか?

山﨑さん

職人として、今やっている仕事をどんどん研鑽して、積み重ねていくこと。もちろんそうですが、あとは海外にいきたいですね。「日本から来た庭師が日本庭園じゃないものをつくっているぞ」と。海外の庭シンメトリーなものが主流なんですが、日本の庭は二等辺三角形の組み合わせ、バランスで成り立っているんです。その魅力を広めていきたいですね。

富山駅前のイベント装植。剪定した枝葉を使って子供達と一緒に森のベースを作った。 子供達が歓声を上げる姿とそれを優しく見守る大人達の情景が凄く印象的だったそう

ラボ

最後に職人を目指す若者にメッセージをお願いします!

山﨑さん

庭師は何の資格もいらないですし、やる気さえあれば、歓迎してくれます。伝統を重んじながらも、クリエイティブなことができる。5年我慢して、身を置いてみれば、絶対得るものはあるはずです。表面に見えるものの奥底にあるもの、それを学ぶのが修行です。世の中の大半のことは後から理解がついてくる。職人仕事は深くて面白いですよ。

山﨑広介

PROFILE

山﨑広介箱庭設計

〒930-0044 富山市中央通り1-6-9-4F
greenplanet8624@gmail.com

山﨑広介

【生年月日】1973年6月24日
【家族構成】妻、一男、一女
【趣味】 散策
【座右の銘】「得意な人が得意なことをやればいい」何でも独り占めするのではなく、自分より上手にしてくれる人がいるならその人に頼めばいい。その人の技術を隣で見て『おぉ』と唸っていればいい。