連載記事
※毎週火曜日に掲載
青山建築計画事務所
テーマ vol.5建築設計の楽しさ
「新しい空間創造へのチャレンジ」
前回のテーマ「建築と都市」、とっても面白かったですね。建築は都市や周辺環境から大きな影響を受けていて、お互いが切っても切り離せないような関係性があることが分かりました。
種昻さんの文を読むと、その関係を「こと」にまで拡げて話しをされています。このように都市への着眼点が異なれば建築の形も違って実現していて、都市と建築が持っている関係性の奥深さを感じます。
さて、今回からは最後のテーマ「建築設計の楽しさ」が始まります。私は建築設計という仕事を長年続けてきましたが、建築設計という仕事をしてきて「何が楽しかったかなぁ」と思い巡ってみると、まずは人との出会いが思い起こせます。
クライアントの方々や工事関係者の皆さん、仕事を通じて出会った人たちとのパッション(情熱)の交感は、時に厳しいものがありましたが自分にはない世界を広げてもらいました。こうした体験の積み重ねが仕事を続けていく楽しさとなっています。しかし、これは多分どんな仕事であっても同じだと思います、建築設計だけに限ったことではないですね。
今まで「なんて素晴らしい建物なんだろう!」と、思わずその場に佇んで至福の時を体感した建築がいくつもあります。建築設計の道に導かれた小学生の時に見た白いモダン建築の水道局官舎は今でも思い出しますし、旅先で見た数々の建物や街並み、また立ち寄ったお店でも素敵な建物だと心豊かな気分を体験してきました。
建築設計の仕事はこのような心躍った体験と同じことを自分にも創造する機会があるということです。もちろん簡単なことではありません。体験したことを思い出しながら、新しい空間創造にチャレンジすることが建築設計の楽しさの一つでもあります。
幼い頃からプロダクトデザインを見るのも好きでした。工業製品(プロダクト)は必要とされる機能を形にするということが求められますが、その形、つまり機能性を満たした上で且つ美しいプロダクトに惹かれてきました。機能性と美しさが両立したものを「用の美」といいます。
建築もプロダクトと同じように、まずは「使い勝手が良い」という機能性が備わっていることを求められます。しかしそれだけでは味気ないですね。機能性も高く且つ美しさというか、形が持つ空間の佇まいが機能性をも包み込んでしまうくらいに良くできた「用の美」を達成したいものです。
しかしこれがなかなか難しく、そのキッカケとなるアイデアを探す苦悶の日々です。でもこれが楽しいんですね。ありきたりの答えに何か魅力的なアイデアを付け足すという、大したことではない行為(建築設計の仕事)に魅せられています。
このあと9人の建築家が「建築設計の楽しさ」を語ってくれます。どんな話しが聞けるのかとても楽しみです。皆さんがその中の一つでも共感する楽しさに出会えるといいですね。