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連載記事

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ケンチクノワ

富山を拠点に県内外で活躍する個性豊かな建築家12名のリレーブログ。テーマに沿って12名の建築家が建築設計に対する想いや考えを綴り、バトンを5周繋ぎます。今回から遂に最周回となりました。ラスト5周目のテーマは、「建築設計の楽しさ」です。

※毎週火曜日に掲載

青山建築計画事務所

青山(あおやま) 善嗣(よしつぐ)


テーマ vol.5建築設計の楽しさ

「新しい空間創造へのチャレンジ」

前回のテーマ「建築と都市」、とっても面白かったですね。建築は都市や周辺環境から大きな影響を受けていて、お互いが切っても切り離せないような関係性があることが分かりました。

種昻さんの文を読むと、その関係を「こと」にまで拡げて話しをされています。このように都市への着眼点が異なれば建築の形も違って実現していて、都市と建築が持っている関係性の奥深さを感じます。

さて、今回からは最後のテーマ「建築設計の楽しさ」が始まります。私は建築設計という仕事を長年続けてきましたが、建築設計という仕事をしてきて「何が楽しかったかなぁ」と思い巡ってみると、まずは人との出会いが思い起こせます。

クライアントの方々や工事関係者の皆さん、仕事を通じて出会った人たちとのパッション(情熱)の交感は、時に厳しいものがありましたが自分にはない世界を広げてもらいました。こうした体験の積み重ねが仕事を続けていく楽しさとなっています。しかし、これは多分どんな仕事であっても同じだと思います、建築設計だけに限ったことではないですね。

 

今まで「なんて素晴らしい建物なんだろう!」と、思わずその場に佇んで至福の時を体感した建築がいくつもあります。建築設計の道に導かれた小学生の時に見た白いモダン建築の水道局官舎は今でも思い出しますし、旅先で見た数々の建物や街並み、また立ち寄ったお店でも素敵な建物だと心豊かな気分を体験してきました。

建築設計の仕事はこのような心躍った体験と同じことを自分にも創造する機会があるということです。もちろん簡単なことではありません。体験したことを思い出しながら、新しい空間創造にチャレンジすることが建築設計の楽しさの一つでもあります。

フランス 南プロバンス地方にあるル・トロネ修道院。1175年完成のロマネスク様式のシトー会の修道院。世界遺産

光と影が交錯する石だけで作られた中庭に面した回廊は美の極致とも感じられた至福の空間体験でした

フランス東部のロンシャン地方に建つ、ご存じ、ル・コルビュジエ氏設計のロンシャン礼拝堂

このロンシャン礼拝堂は有名だが(そんなに好きではなく)敷地内に2011年に建てられたレンゾ・ピアノ氏設計の修道院の方に興味があって訪れた。 しかし礼拝堂の内部に入ってみるとこれが圧巻!静謐でありつつ躍動的、大胆であり繊細でもあるという相反する要素が統合された何とも魅力たっぷりな空間体験でした。スバラシイ

有名なバルセロナのサグラダ・ファミリア。キワモノ的人気の建物と思って興味もなかったけど、入ってみると圧倒的な空間性と細部の造形力に打ちのめされました

東京の神宮前にあった伝説的な「バー・ラジオ」。駆け出しの頃に分不相応と自覚しつつ通いました。何から何まで勉強の名に値するしつらえでした

幼い頃からプロダクトデザインを見るのも好きでした。工業製品(プロダクト)は必要とされる機能を形にするということが求められますが、その形、つまり機能性を満たした上で且つ美しいプロダクトに惹かれてきました。機能性と美しさが両立したものを「用の美」といいます。                    

建築もプロダクトと同じように、まずは「使い勝手が良い」という機能性が備わっていることを求められます。しかしそれだけでは味気ないですね。機能性も高く且つ美しさというか、形が持つ空間の佇まいが機能性をも包み込んでしまうくらいに良くできた「用の美」を達成したいものです。

しかしこれがなかなか難しく、そのキッカケとなるアイデアを探す苦悶の日々です。でもこれが楽しいんですね。ありきたりの答えに何か魅力的なアイデアを付け足すという、大したことではない行為(建築設計の仕事)に魅せられています。

BMW初期のオートマチック車のシフトレバーはこれだった。T型のレバーはBMWのみで操作のしやすさとカッコの良さはまさに「用の美」を体現していた

1990年に発表されたヤマハのバスタブ。起き上がるときの把手が秀逸。安全で起き上がりやすい形でデザインもいい。バスタブの大きさと形もグッド。これを超えるバスタブはまだ出てこない!

富山市の神通大橋の柱脚を下から見るとこんな羽根が見える。下からしか見えないのがもったいないくらい美しい。富山市自慢のプロダクトデザインと思うのは私だけ?

このあと9人の建築家が「建築設計の楽しさ」を語ってくれます。どんな話しが聞けるのかとても楽しみです。皆さんがその中の一つでも共感する楽しさに出会えるといいですね。

代表取締役 青山 善嗣

PROFILE

(有)青山建築計画事務所

〒930-2206 富山市金山新12
TEL.076-435-6201
FAX.076-435-6202
http://www.aoyama-architect.com/

代表取締役 青山 善嗣

経歴
1953    富山市生まれ
1976~82 渡辺武信設計室(渡辺武信氏に師事)
1982~88 スペースシステム建築事務所
1988~98 b2デザインアソシエイツ(協同主宰)
1998・6  有限会社青山建築計画事務所 設立
現在に至る

一級建築士
(公社)日本建築家協会 登録建築家
応急危険度判定士