連載記事
※毎週火曜日に掲載
濱田修建築研究所
テーマ vol.5建築設計の楽しさ
「まだ見ぬ未来に思いを巡らす」
いよいよ最後となりました。今回のテーマは「設計の楽しさ」です。これには多く思い当たる節が多くあるので、すんなり書けると高をくくっていたのですが、締め切りも近づいて、改めて考えてみると、たくさんの楽しさの裏側にはそれなりに苦労が多くて、手放しで楽しめた現場はありませんでした。苦労が多い分だけ完成すると達成感も加わり嬉しいのです。
数回前の道古さんのコラム「日々、学び」では、成長する喜びを書かれていました。全く同感で、努力した先に成長を実感できた時ほど嬉しいものです。建築家はアスリートと同じかもしれません。コンペでは連敗続きなのに、次のコンペがあればまた勝利を夢見て全力で立ち向かってしまいます。そしてまた判定負けになるのです。
ただ、悲しいけれどコンペごとに何か成長した満足感もあるのです。最終回に設計は「努力する楽しさ」と言ってしまっては、これから建築設計を志そうとする学生にとって気が重たくなるのではないかと危惧しています。私自身がこんなに長く続けているのは、他に何か無条件で楽しめる事があるはずなのです。そんな思いで過去4回の私のコラムを見直してみました。
1回目の「建築設計との出会い」では、未知なる世界にあこがれて建築に進みました。
2回目「完成までのプロセス」では、予期せぬ展開を楽しみ、
3回目「アイデアとの出会い」では、施主との対話の中で発想し、
4回目「建築と都市」では、将来起こる社会との繋がりを想像していました。
なるほど。すべてがまだ見ぬ未来に思いを巡らせていました。そうなのです。建築設計の楽しさはここにあるのです。つまり、将来この建築の中や周辺で起こるであろう「できごと」を想像することです。そして完成時だけではなく、10年後、20年後、50年後・・・、社会でのその佇まいを想像するだけで、設計は楽しくなります。
設計を志す皆さんもコンペや課題で想像することは同じです。もしもこの案が実現したら、この空間ではこんな人々が集まり、このような行動や生活をして、そしてこんな出来事が起こり・・・など、想像してみましょう。きっとそこには、「こっちの空間やプランの方がもっと面白くなる」などのアイデアが湧き出て来るでしょう。そしていつかは、自分の構想が実現する時が必ずやってくると想像すれば、ワクワクするはずです。
皆さん、建築を楽しみましょう!