連載記事
テーマに沿って12名の建築家が建築設計への想いや考えを綴り、バトンを繋ぎます。
第1弾のテーマは「建築設計との出会い」です。
※毎週火曜日に掲載
studio SHUWARI Inc.
テーマ vol.1 建築設計との出会い
「Mid Century Modern」
僕が建築設計を志すことを決めたのは、おそらく高校2年生の頃だったように記憶しています。その頃、上市町に住んでいた僕にとって、週末に地鉄電車に乗り、富山市内へ繰り出すことがとても楽しみでした。
中央通りにとてもお洒落な家具や雑貨を取り扱うお店があり、そこで「Mid Century Modern」という1冊の本に出会います。その本にはモダンなデザインの家具やインテリアが多数掲載されていて、当時とても刺激的に感じ、こんなことを職業にするにはどうすればいいだろうと調べ始めるきっかけになっていたと思います。
中学の恩師に相談しに行き、アートやデザインを学ぶ学校に進学すれば良いということがわかって、芸術系の大学に進学しました。大学でデザインを学ぶ中で、その興味はインテリアデザインから建築設計へと広がっていきました。より大きな空間や人の動き、窓から見える風景までデザインできるとことが建築設計の魅力だと感じていました。
大学卒業後は富山に戻ってきて3年間設計事務所で勤めました。とても大変でしたが、その3年間で僕の建築設計の基礎が培われたと思います。
その後、名古屋のインテリアデザイン事務所に就職し、はじめは居酒屋さんやホテルのレストランなどのデザインを担当しました。その後9年間その事務所に勤める中で、個人住宅やショールーム、オフィスなど様々なインテリアや建築の設計を経験しました。
今の若者はあまり感じないかもしれませんが、当時の業界にはなんとなく建築設計の王道コースというものがあったような気がします。個性的な住宅を設計したり、公共建築のコンペに応募したりするのが建築家である、みたいな。
そんな王道コースに全く乗れない自分に後ろめたさを少し感じながらも、目の前のクライアントのために一生懸命仕事に取り組んでいました。今思えば、その経験が今の自分のジャンルに捉われない、自由な発想の源泉となっているような気がします。
自分が大学生の時に思い描いていた建築家像と、今の自分はかなり違っているように思います(本当はもっと強い「建築家」になる予定だったのですが・・)が、少しづつ手探りではありますが、自分なりの設計スタイルが出来つつあるようにも思っています。
これからの時代、もちろん何かに強く憧れて、それに向かって突き進むことも大切だと思いますが、まずはやってみる、やりながら自分の心地良い仕事のスタイルを模索していくのも良いのではないかと思う今日この頃です。