連載記事
※毎週火曜日に掲載
山田哲也建築設計室
テーマ vol.5建築設計の楽しさ
「ケンチクノチカラ」
先日、市内を歩いていると数人の学生から「ケンチクノワいつも読んでいます!」と声をかけられる夢を見ました。
12人でバトンをつなぎ、約1年に渡り連載してきたケンチクノワも今回で本当の最終回です。先述した夢のような事は残念ながらまだありませんが、建設ラボには多くのアクセス数があるようで、あと2〜3周したら現実になったんじゃないかと思うと残念でなりません。
最後のテーマは「建築設計の楽しさ」です。みなさん様々な設計の楽しさや学生へのメッセージを伝えてくださいましたね。皆さんが語ってくださった事、全てに共感できます。
これだけ挙がれば読者のみなさんにも建築設計の楽しさが十分に伝わっていると思いますが、それ以外に私が建築設計の楽しさを挙げるなら、なかなか思い通りにいかないけど、少しでも良い案を造ろうと四六時中考え、ちょっと上手くいくと喜んだり、ふとした時に思い出したり、勝手に将来の事を考えたり、他の人の案に嫉妬したり、まるで片想いのようなところでしょうか。
大学から建築設計を始めて20年以上経ってもずっと片想い中ですが、きっとこの状況が楽しいのだと思います。さて、最終回にあたりこれまでのみなさんの文章を読み返し、感じた事があります。
青山さんの 不利な敷地条件を計画に活かす逆転の発想
齋田さん、本瀬さんの 風景を翻訳するという手法
種昻さんの 既存建物の使い方を工夫することで生まれる都市との関係性
道古さんの 譲れない想い
中斉さんの クライアントと都市に対する使命感
沼さんの 敷地、道路、都市を再編集した花水木ノ庭
濱田さんの 社会との関係を想像しながら創造すること
法澤さんの 建物の中に都市をつくる
水野さんの 引き出しにため込まれたアイデア
それはみなさんが綴ってきた想いの根底に「建築の力」を信じる想いがあるという事です。特に濱田さんの「建築設計の楽しさは将来、この建築の中や周辺で起こるであろう「できごと」を想像することです。」という文は、自身が設計した建築の力を信じているからこそだと思いました。
建築と言っても、実際に建築を建てること以外に、場づくり、仕組みづくりと手法は様々ですし、個人、家族、客、街等々、対象も多岐にわたりますが、私たちはこれまでの経験から、「建築でなければクリアできない問題もある。建築にはそういう力がある」と信じているからこそ、様々な想いのもと設計活動を続けてこられたのだと思います。
コロナウイルスによって様々な距離感に変化が生じている現在、建築の力を信じ、何ができるか考え設計活動を続けたいと思います。
最後に、
このリレーブログを通して読者の方々に少しでも建築家の想いや建築設計の楽しさが伝わり、家にいる時には自分の部屋が、一歩外に出た時には街の景色がこれまでと少しでも違って見えてくれたら幸いです。
そしてこのリレーブログがきっかけで建築業界へ足を踏み入れ、ケンチクノワがもっと大きな輪になる事を期待しています。