連載記事
テーマに沿って12名の建築家が建築設計への想いや考えを綴り、バトンを繋ぎます。
第1弾のテーマは「建築設計との出会い」です。
※毎週火曜日に掲載
DOKO一級建築士事務所
テーマ vol.1 建築設計との出会い
「小さな世界から大きな世界に」
「どうして建築家になろうと思ったのですか?」
クライアントとの雑談時、学生向けの講話をさせていただいたときに、度々この質問を受けます。こういう建築を見て感銘を受けて、と建築家らしい発言をしたいところではありますが、建築を志したきっかけは、少し躊躇しつつ、正直にこう答えます。「小学生の時に、シルバニアファミリーで遊ぶことが大好きだったのです。」と、、、。私は、単純に子供のころに自分が好きだったことを選び、建築の道に進みました。
私は外で友達と遊ぶことも大好きでしたが、じっくりシルバニアファミリーで遊ぶ時間も大好きな小学生でした。おもちゃ屋さんでみた見本のお家の中には、家具が配置されていて、外にはブランコがあって、ベンチがあって、初めて見たときはとても衝撃的でした。なんて楽しい世界がここにあるのだ、と目を輝かせていたものです。
それから誕生日やクリスマス、イベントのプレゼントにはキッチンやトイレ、家具たちをコツコツと集めました。現在では進化したお家になっているようですが、私が子供のころは1階に1部屋、2階に1部屋の単純なお家でしたので、集めた家具が収まりきらないですし、自由度もないのでお家購入には至りませんでした。また人形遊びが好きだったわけではなく、ではどうやってこの遊びに没頭していたのか、、、。
近所の工場で20cm×5cm×1cmの廃材を沢山貰ってきて、それを壁にみたて部屋を作って家具を配置して、また別の部屋を作ってつなげていく。そのうち、大きな紙に廃材の型をとり、部屋のカーペットの色を絵具で塗り、その上に家具を配置し、大きな家を作ります。1つ住宅が完成すれば、その中で人形遊びをして楽しむわけでもなく、また1から新たな家を考えていく、これをずっと黙々と繰り返していきました。
1日で完成するわけでもないので、生活の邪魔にならないように、家の奥にある3畳ほどの縁側で、何年もこの遊びを黙々としている私の姿を見た両親は、とても心配したことでしょう。
大学に進学する際に、自分はいったい何になりたいのだろう、と考えても何もわかりませんでした。では、小さいころ楽しくてワクワクしたことを学んでみよう、と選択したものが建築です。
そこから建築設計の世界は広がりました。大学の恩師に出会い、師匠に出会い、同じ志を持つ友と出会い、沢山の建築に出会い、建築設計の楽しさを今もなお感じています。あの頃から30年、今では1枚のスチレンボードから自分で設計した建築物を何十分の一のサイズで造りあげることが出来るようになりました。そして、それが実際、この世の中に存在しています。
建築設計は間取りを考えるだけではなく、一人で作って満足して終わりではありません。それでも、ただただ直向きだったあの頃の気持ちを持ちつつ、ずっと目を輝かせていられるようでありたいと思っています。