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連載記事

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わかもん

富山工業高校生のプランが基になり、全国に先駆けて整備される職住一体の施設「富山県創業支援施設・U I Jターン等向け住居等(仮称)」が来春オープンします。「わかもん〜高校生のプランが現実に〜」は、「建築家 仲俊治✖️富山工業高校教諭 藤井和弥✖️とやま建設ラボ」の3者によって、この施設が完成されるまでを綴る期間限定連載です。

※隔週火曜日に公開

とやま建設ラボ()()


「建築がもたらすもの」

わかもんVol.6は、2017建築甲子園優勝メンバーの榊原由比菜さん、新村希和さん、高柳桃花さん、早野詩織さんと当時の監督、藤井先生のインタビュー(後編)です。

4年前の当時を振り返ってもらい、建築甲子園が自身に与えた影響と、「地域」を意識した作品づくりについてお聞きしました!※わかもん Vol.3が前編です!https://www.kensetsu-labo.com/series/2927

 

ラボ

建築甲子園を優勝したこのリノベーションプランは、皆さんにとって今どんな存在ですか?そして当時は、どんな想いで取り組まれていましたか?

榊原さん

進学するために、一つでも建築コンペに取り組んでいきたい!と思い頑張ってきましたが、建築甲子園が3年間取り組んできたコンペの集大成となりました。建築甲子園は半年以上、このメンバーと取り組んで作り上げたプラン。高校生活の大事な思い出です。まあかなりキツかったですが(笑)。メンバーと色々と言い合いながらも、振り返ると楽しかったなと思いますし、今は建設業界で働いていますが、建築甲子園の優勝は改めて本当に光栄な事だと思っています。

ラボ

建築甲子園優勝。実際のお仕事に活きているところはありますか?

榊原さん

既存図面からCADデータに残していく作業が結構大変で…。夜な夜なみんなと電話して、「ヤバイー!」なんて言いながら懸命に取り組んでいましたね。明日までやっていかないとマズイ!っていうプレッシャーもありましたし(笑)。ただ、CADの操作を自分達で調べて、どうすれば上手くいくか、効率良くできるかを必死で考えていたので、あの時の経験がしっかり活きています。

あとは建築を通して「地域とどう向き合い、どう変えていくか」を考えることが出来たことは大きいです。自分達が住む、この「富山」を深く考える機会もなかったし、この先の富山はどうなっていけばいいのか、どうすればいいのかを考える良い機会に恵まれました。

ラボ

「富山」について考える…。私も見習わなければ!新村さん、お願いします!

新村さん

高校生の時、建築コンペ全般に参加しましたが、アイデアコンペばかりを手掛けていたので、「実際に建つの?」と疑問に思う事も少なくなかったです。もちろん、アイデアコンペの大切さもわかってはいましたが。建築甲子園は現実味があり、実際に作れそうなものを提案出来たことで、良いトレーニングとなり、大学の設計実習に繋がっています。

建築甲子園のコンセプトでもある「地域」「地域住民」のことを広い目線で考えることが出来たので、建築がもたらす地域への影響力を考えながら、設計する大切さを教わりました。自分が将来設計を手掛ける際は、「地域に影響できる建築」を建てたいと思うキッカケになりました。

ラボ

甲子園当時から、「地域への影響」について深く考えていらっしゃったんですね!

新村さん

ベースとして、「地域」のことを考える気持ちは常に持っていました。よね??(藤井先生を見ながら)

藤井先生

なんでこっちを見ながら言うの?(笑)

新村さんの天然でとにかく笑いが起きる

早野さん

自分の高校生時代がどうだったかを振り返ると3つあります。1つ目は建築甲子園、2つ目は部活、3つ目が勉強。建築甲子園は一人のコンペではないので、みんなと取り組めることの楽しさもあり、苦しさもありました。一言で言えば「青春」でした(笑)。

ラボ

早野さん、部活は何部だったんですか?

早野さん

バドミントン部です。入部当初は藤井先生に反対されましたけど(笑)。

藤井先生

え?あんまり覚えてないですけど…、ただ工業高校のバドミントン部は男子の部しかなくて、女子が男子に混ざって3年間一緒にトレーニングすることの大変さを指摘したことはありますね。

早野さん

先生の反対を押し切る反骨精神でやり切りました(笑)。

藤井先生

その気持ちは大事だね。

早野さん

私は元々、就職するつもりで工業高校に入ったんです。でも、色々と学ぶ中で将来は建築に携わりたいと思うようになり、大学進学を決めました。コンペや甲子園を通じて、普通の高校の授業では出来ないことを経験させてもらいました!

高柳さん

私はみんなと違って建築の仕事に就きませんでしたが、3年間建築を学んできて、自分の経験が形になって残っていく。それはスゴイ良かったなって(笑)。

ラボ

建築以外のお仕事をされているわけですが、甲子園の経験が活きる場面はありますか?

高柳さん

そうですね~。あの辛いことを乗り切れたので、何でも頑張れますね(笑)。

藤井先生

おいおい(笑)。

ラボ

最後に、藤井先生からも一言いただけますか?

藤井先生

僕にとっては、現在進行形のプロジェクトなので自分の想いは非常に強いです。そして、このプロジェクトは色々な切り取り方が出来ると思っています。

ラボ

色々な切り取り方ですか??

藤井先生

一つは、この4人のメンバーの成長に影響を与えたこと。早野さんが設計の道に進み、地元の組織設計事務所に就職することになり、新村さんは西沢立衛さんのようなトップアーキテクトのところにインターンに行き、海外に留学して独立を志すことになり、榊原さんは建材商社に就職して建築士の資格を取り、次は一級建築士を目指している。高柳さんは……とりあえず元気でいてくれている(笑)。

藤井先生

甲子園から4年経った今も、みんながこんなに沢山のエピソードや想いを話せること自体が凄いことで、人生の重要なターニングポイントになっているのであれば嬉しいです。このメンバーだけじゃなくて、同世代のクラスメイト達にとっても、想うことはきっとあると思う。

そして、また違う切り取り方をすれば、後輩達が甲子園を意識するようになり、事業化が決まってからは蓮町団地のフォトコンテスト、プロモーション動画をはじめ、ワークショップ(以下:WS)を展開しています。WSは今年で2年目に入りましたが、現役の生徒は正直この4人の顔も知りません。WSを開始した去年の3年生は、プロジェクトの熱量や想いが全然伝わっていなくて、最初は「何で知らない先輩の事業を引き継がなきゃいけないの?」みたいな感じでしたね。

今年2月に富山市民プラザで開催されたWS

ただ、進めていくうちに楽しくなり、「頑張ろう!」と意識が変わっていくんです。仲さんや照明のトップデザイナーの岡安さんらから、凄い刺激を受けて成長していき、最後は「やって良かった!」と言っていましたね。そして、今の3年生が一つ上の先輩がWSで残していった椅子や照明を引き継いで、改良しています。ふと思うことは、これこそが本当の「伝統」だと私は思うんです。先輩のやってきたことを引き継ぎ、ものづくりや地域と関わることを体感する。どこまで続くかはわかりませんが、凄く良い伝統が続いていると思います。

今年7月に開かれたWS成果報告会。椅子の仕上がりを確認

建築甲子園をきっかけに、富山県建築士会やJIA富山地域会の皆さんが気にかけてくださって、建築士の未来授業やONEワクといったイベントを生徒と協同でやっていただけるようになった。そう思うと、このメンバーは色々な可能性を広げてくれ、大きなことを成し遂げてくれたのだと思います。

この4名が富山の建築界に与えた影響は大きい

2018年富山工業高校で行われたONEワク、建築家と高校生が協働で設計を

半日かけて図面と模型を完成させる。学校では味わえない経験

今は、高卒でも建築設計事務所に就職希望の生徒も出てきているし、建築を通じて地域が良くなっている実感があります。教師として本当に嬉しいことです。

ただ、この事業に尽力されている方が大勢います。県の創業ベンチャー課の担当者さん、設計者の仲さんをはじめ、仲建築設計スタジオの方々、現場で施工されている方々、WSで必死に頑張っている生徒もいます。沢山の人達が携わるこのプロジェクトが是非とも成功し、若者を中心に地域をつくる一つの事例になればと思います。