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連載記事

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わかもん

富山工業高校生のプランが基になり、全国に先駆けて整備される職住一体の施設「富山県創業支援センター / 創業・移住促進住宅」が来年7月にオープンします。「わかもん〜高校生のプランが現実に〜」は、「建築家 仲俊治✖️富山工業高校教諭 藤井和弥✖️とやま建設ラボ」の3者によって、この施設が完成されるまでを綴る期間限定連載です。

※隔週火曜日に公開

とやま建設ラボ()()


「始まりの場所」

今年度、富山県庁に新設された「成長戦略室 創業・ベンチャー課」。ここは、富山県創業支援センター / 創業・移住促進住宅の整備、運営の担当課です。この施設の整備を一番近い距離で担当しているのが創業・ベンチャー課の野村慎太郎さん。発注者(富山県)でありながら、設計者、施工者と協働で事業を進める野村さんに、この施設整備のお話や建築甲子園優勝から実現に至るまでを、根掘り葉掘り聞いてきました!

 

Q. 本日はよろしくお願いします。まずは野村さんの普段のお仕事を教えて下さい!

私は今年度創設された成長戦略室「創業・ベンチャー課」に所属し、蓮町の事業(富山県創業支援センター / 創業・移住促進住宅)を全般に担当しています。約2年前、設計プロポーザルで仲建築設計スタジオさんが選定されて以来、仲俊治さんらと設計を進める段階から携わっており、仲さんらと共に歩みながら事業を進めています。

Q . 2017年建築甲子園の優勝作品が「現実のものになる」蓮町の事業ですが、発注者そして担当者として今の想いをお聞かせ下さい

蓮町事業は、旧県職員住宅を住居棟2つ、オフィス棟1つに改修していますが、住居用として3棟72室あった旧職員住宅をオフィスの用途にも改修しているので、様々な面で苦労しています(苦笑)。何度も打ち合わせや検討を重ねて、現在施工までたどり着きました。

建築甲子園の優勝作品は、4年前にも関わらず高校生が「シェア」という概念をテーマにしており、凄く斬新だなと感じました。実際の利用シーン、利用者の日常をイメージしながら作られた高校生達のプランは、本当に完成度が高いなと感心します。

発注者としては、自ずと人が集まるような空間に仕上げたいと考えています。これまで多くの方にお話を聞きながら、またそこに仲さんの知見を十分に反映させられるよう、この施設に必要なこと、地域に必要なことを考えてきました。日本一に輝いたプランをしっかりと形に出来る様に頑張っていきたいです。

創業支援センターのイメージ(提供:仲建築設計スタジオ)※画像は計画段階のものであり、最終的な仕上がりとは異なることがあります

 

Q . 創業支援センターは一体、どんな施設なんですか?

1階はチャレンジショップの店舗、2階はコワーキングスペース、3階はブーススペース、4階は個室スペースとなる予定です。上の階層に行けば行くほど、クローズな空間になっていくのですが、最初はコワーキングスペースから活動し始めた人がブースに移動し、個室に移り、そして県内に事務所を構える…。あくまで一つの例ですが、そんなサクセスストーリーになればいいなと思います。

施設のコンセプトは「職住一体」。住まうことと働くことの調和の実現はもちろんですが、入居者以外が近寄りがたい異質な空間にはならないよう配慮する必要があると考えています。1階のチャレンジショップを中心に地域にも開けた場所にしたいです。

富山工業高校で定期的に開かれるワークショップでは、クリエイターと高校生の協働製作を見守る

Q . この施設整備の事業化が決まるまでの流れを教えて下さい

この事業は、建築甲子園優勝作品が掲げていたように、旧職員住宅をリノベーションして新たな施設として復活させることを目指しています。旧職員住宅は供用廃止した後の活用が県政の課題でもありました。2017年に建築甲子園優勝メンバーが知事表敬に訪れた後に、事業化へと加速していきました。

 

Q . ちなみに…野村さんは学生時代に「建築」を学んでこられたんですか?(プライベートなこと聞いてすいません)

一般の行政職なので、建築についての知見は全くありませんでした(泣)。専門知識がないので、今でもわからないことだらけです(号泣)。この部署に来る前は畑違いの医療政策の担当課に所属していました。ただ、蓮町事業を担当してからは、仲さんが行政職員の理解が及ぶレベルまで落として解説や説明を懇切丁寧にしていただけるので本当に助かります。仲さんはこの難解な事業を真摯に、丁寧に手掛けてくださるので、信頼を寄せています。

そして、富山工業高校建築工学科の藤井先生。設計段階の打ち合わせ、施工現場の定例会議に、ほぼ皆勤賞で出席して頂いています。このお二人から得られる熱意やエネルギーに支えられ、何とか今日までやってこられていますし、私自身の大きな原動力になっています。

スマホをチェックする仲さんと藤井先生の間に挟まれる野村さん

Q . 高校の先生が(施工者の)定例会議に参加する事は極めて稀ですよね?

蓮町事業は、建築甲子園優勝作品が現実のものとなるということで、「全国優勝からのその先を、完成するまでを見たい」と藤井先生から熱い申し出がありました。とは言うものの、まさかここまで一緒に取り組んでいただけるとは思ってもいなくてビックリしています(笑)。ご自身の自由な時間を削ってまで、ご参加頂いているので感謝していますし、大変心強い存在です。

クリエイターらと意見を出し合う

Q . 現役生徒(3年生)が椅子や照明製作のワークショップに取り組んでいると聞きました!

ワークショップ(以下:WS)は先輩のプランや夢、想いを現役生徒が引き継ぎ、主体的にチャレンジする事を目的に開催されています。WSでは、施設に若者の創意工夫を反映すべく、創業支援センターで使用するイスやテーブル、照明、グラフィックデザインの企画や製作に取り組んでいます。実はこのワークショップも藤井先生からご提案いただき、仲さんのご理解も得て企画化に至りました。

通常の授業ではない工程に悩む生徒さんの姿も見ていますが、先生方も熱心に取り組まれているので、我々としても初心に立ち返り、「この事業、元々はここから始まったんだな」と感じます。若者の夢を実現する施設を「若者たち」がつくり上げていくことが、このWSで非常に大事なところです。

今年度前期のWS

今年度前期のWS

WSで自らの意見を語る野村さん

 

Q . WSに参加してみたくなりました(笑)

WSが終わった後は、デザイナーさんや先生らと打ち合わせをするのですが、生徒さんへの真摯で真っすぐな想いが伝わります。担当者としては、高校生の夢を高校生が実現するというストーリー大事にしています。丁寧に取り組んでいるこの取り組みが、施設オープン後にきっと花を咲かせる、一つのブランド価値になると信じています。携わった生徒さんには、自分たちが作った施設なんだと自信や愛着を持っていただきたいですし、何度も立ち寄っていただきたいです。

WS終了後の熱い反省会

Q . 蓮町事業に懸ける想いが伝わってきます!

蓮町事業はやればやるほど前向きな仕事ですし、自分の想いを汲んで形にしていける、やりがいのある仕事です。約2年前、設計段階から仲さんと、「どんな人がどんなシーンでこの場所を利用するのか」「貫通路を設置するとココはどうなるのか」など、模型図を見ながら何度も何度も検討し、シミュレーションと妄想をひたすらに繰り返す日々でした(笑)。

休日には施設に隣接する馬場記念公園、北部児童館にお子さんと遊びに行ったりもされるそう!

 

Q . 完成がますます楽しみになってきました。最後に、この施設は「富山」にとってどのような施設になり、どんな効果が発揮されるのでしょうか?

全国的にも団地をリノベーションして「住居」として活用する例は少なくないですが、「職住一体」の施設は全国にも例がないと思います。決して、「行政チック」なものにならないように。民間事業者のノウハウや活力を存分に活かして、「作りました。終わり」ではなく、持続性があって県民や地域の方がコミュニケーションを取れる場所にしていきたいです。

起業・移住される方にとっても、ここは「始まりの場所」になると思います。ここを拠点に地域が活性化するエネルギッシュな場所になることを期待しています。

また、施設運営では、先日指定管理者が決定されたところです。県内外で活躍する個性豊かなメンバーがこのプロジェクトに参画しますので、ますます面白くなっていくと思います。※蓮町創業支援拠点運営共同企業体(代表者=株式会社バロン、構成員=合同会社シェアライフ富山、合同会社plan-A TOYAMA)

最後に、仲建築設計スタジオの若手スタッフ、施工業者の皆さん、高校の先生、生徒さん達、携わる全ての方の苦労が報われるよう、全ての想いを紡ぎ、結集していきたいです。多くの方が活躍できるステージを、裏方として創り上げていきたいと考えています。

 

PROFILE

富山県知事政策局 成長戦略室
創業・ベンチャー課 主任 野村慎太郎さん

1985年生まれ。富山県富山市出身。
好きなことは、海外旅行と育児。
子供に好かれたいがために、2021年より「アンパンマン大図鑑」の精読に日々励む。
最近覚えたキャラクターは「ふでじいさん」。