MENU

連載記事

連載記事

ケンチクノワ2

富山を拠点に、県内外で活躍する個性豊かな建築家・建築士10名によるリレーブログ。
テーマに沿って10名の建築家・建築士が建築設計への想いや考えを綴り、バトンを繋ぎます。
第4弾のテーマは「建築と都市 ~周辺環境との関係性~」です。

※毎週火曜日に掲載

吉川和博一級建築士事務所

吉川(よしかわ)和博(かずひろ)


テーマ vol.04建築と都市
       ~周辺環境との関係性~

「開口の向こうに見えるもの」

 

桜の季節は朝食を食べながら毎日花見ができる。実は桜の木の下は紅葉なので、秋も楽しみな開口からの風景

今年の桜の季節。昨年竣工した住宅で写真撮影をしていました。道を挟んだ向かいの立派な桜と、2階のテラスから運河沿いの桜がよく見えるように開口部を設計したので、そこから見える借景を写真に収める為です。 

テラスから運河の水面と夕陽、そして春は桜を眺めることができる開口

開口が切り取った風景もその空間を構成する大切な要素だとすれば、その空間にいる限り、向かいの桜も、近所の田園や海も、彼方に見える山々も、テラスから見上げた星空でさえも、開口から見えるすべての要素が(例え何万光年離れていようとも)その建築にとって大切な一部になります。

お施主さんがその風景を気に入ってくれれば、毎日、毎年眺めたいと楽しみにしてくれるかもしれないし、「いつまでもそうあってほしい、守りたい」と思ってくれるかもしれません。 

納屋を改装して作ったショップの開口。春は水鏡、夏は緑、秋は黄金の稲穂、冬は真っ白な雪原を切り取る

海辺のフォトスタジオの開口が切り取る富山湾

民宿のテラスの開口。天気が良ければ立山連峰、早起きすれば海から登る朝日が臨める。前夜に飲み過ぎると見逃します

星を眺める開口。「ちょっと良い望遠鏡を買います!」と、お施主さんは意気込んでいた

都市に大きなインパクトを与えるような大プロジェクトは、かつて組織設計事務所に勤めていた時以来関わるご縁には残念ながら恵まれていませんが…ただ、都市や環境と接する最小単位が結局のところ個人である限り、究極的に自分事である「自宅の開口からの風景」が、都市・環境と個人とを繋ぐ最も身近な装置かもしれません。

そう思うと、どこにどんな開口を開けるのか、建築士の責任は重大…!?ということで、新しい依頼がある度に、今度はどんな風景を切り取ることができるのかと、ワクワクしながら設計をしています。 

どうやら気に入ってくださったようです

吉川和博

PROFILE

吉川和博一級建築士事務所

富山市岩瀬文化町42
HP:https://mss-architects.com

吉川和博

1982年 静岡県沼津市生まれ
2009年  東京理科大学大学院 山名義之研究室 修了
     株式会社日建設計勤務
2011年 富山に移住 VEGA貫場幸英氏に師事
2015年 青山建築・計画事務所 勤務
2018年 デザイン事務所マルサンカクシカク 設立
2020年 吉川和博一級建築士事務所 設立