連載記事
テーマに沿って10名の建築家・建築士が建築設計への想いや考えを綴り、バトンを繋ぎます。
第5弾のテーマは「建築設計の楽しさ」です。
※毎週火曜日に掲載
dot studio
テーマ vol.43建築設計の楽しさ
「楽しさを伝えられているか」
「設計事務所も人手確保や人件費の捻出が死活問題となっている」という記事を見た。
インフレ、高齢化、法改正…。建築設計という仕事は楽しそうに見えているのだろうか??自分のなかで楽しさはいくつもある。コミュニケーション、達成感、プロセス…その楽しさの根源はどこにあるのだろう。
ここ3カ月の携帯電話で撮影した写真を眺めてみると、下のような割合だった。
携帯電話は1台しか持たないので、仕事の写真の割合が多くなっているが、プライベートの写真の中で、建築・デザインに関わる写真が多かった。プライベートの写真395枚のうち、28%にあたる186枚がそれであった。
建築業は裾野が広く、間口が広いが故に日本全国世界中どの場所でも、建築やデザインが存在している。
これらは、誰にでも門を開いていて、誰もがその存在を体験できる。日常に溶け込める専門分野であるというのも、間違いなく建築の楽しさのひとつである。
しかし、それを周囲に伝えられているのかと言われると自信がない。
学生時代、授業やアルバイトで、スターアーキテクトたちに触れる機会は多々あった。日常生活は設計の楽しさに常に溢れていた。
進路においても、意匠や構造、環境、施工、芸術など、様々な形で建築の楽しさに触れる選択肢があったし、どれだけでも時間を費やせると感じていた。
富山に来て10年、あくまで個人的な感想として、様々なシーンで体感したネガティブな印象を書くと、設計やデザインの存在価値がそもそも薄い。古典的な設計者の労働時間体系の使い方に疑問が残る。嗜好性の強い建築論に近寄りがたい。保守的で、デザインに関しての選択肢が少ない。身内で固まるなど(当然、その裏腹に良いところもたくさんありますが)。
私もまだまだ若輩者だが、富山で建築を学んだり楽しんでいる私より若い世代に、自分が体験した以上に、設計の楽しさを体験してほしいし、富山から全国、世界で活躍するアーキテクトが出てきてほしい。
なんだか話が少々それてしまったが、私自身、建築設計の楽しさを伝えていかなければならないと、この媒体を通じて痛感した。
とやま建設ラボは、フラットに建築の楽しさを伝えられる数少ない媒体のひとつである。企画した人間が同級ということもあるのか、これからも社会的な立場に臆する事なく、その楽しさを伝え続けてほしいと願っている。
最後に、ケンチクノワ2では、自らが思う事を偉そうに書かせて頂きました。そしてその中に、今の富山の建築、デザインが置かれた現場に対してのメッセージを込めてきた(つもり)です。
この企画に誘ってくださった森口編集長、原稿を取りまとめ、掲載して下さった運営の方々に感謝申し上げます。