連載記事
テーマに沿って12名の建築家が建築設計への想いや考えを綴り、バトンを繋ぎます。
第1弾のテーマは「建築設計との出会い」です。
※毎週火曜日に掲載
山田哲也建築設計室
テーマ vol.1 建築設計との出会い
「幼少期に決めた建築士への道」
最近、建材の名前が出てこないとか、昨夜何食べたかパッと思い出せない時があります。
そんな状態で今回のお題を見た時に「建築設計との出会い」なんて思い出せるかと心配しましたが、いくつかの出来事や物が思い浮かびました。
小学生の時、実家の増築で初めて設計図を見て、太さが異なる何本もの線と丁寧に書かれた文字で表現された青焼きの図面に惹かれたのをきっかけに、新聞に入ってくる建売住宅の折り込みチラシを見ては自分の気に入った外観や間取りを切り取り、スクラップブックに貼っていました。
それを見た親が「建築士という資格があって、設計という仕事があるんだよ」と教えてくれました。恐らくこれが初めて「設計」という言葉を聞いた時です。そして、何を思ったか小学生の時に「建築士になって設計するんだ」と決めてしまったのです。
その後、大学は建築学科に入学し、ある日仲良くさせていただいていた院生の研究室に遊びに行った時、ふと一冊の作品集を見つけました。「EL Croquis(エルクロッキー)」という洋書で、建築家ダニエル・リベスキンドの特集でした。
田舎育ちで建築家が設計した作品なんて見たことがなく、建売住宅のチラシを見てワクワクしていた僕にとって、リベスキンドの作品は刺激が強すぎで、「これが建築なのか?」という感じで全く理解できませんでした。(今思えばデコン(脱構築主義)と呼ばれる一派なので普段見ている建築と違うのは当然だったのですが笑)
半ば強引に先輩からその作品集を借りて帰り、その夜一人でずっと眺めていました。全く使いやすそうに見えないプラン、壁に斜めに入ったスリット、斜めに交差する柱や梁、当時の僕にとってはその全てが未知の世界だったのですが、その未知の世界に対して拒絶感はなく、むしろなんでこの様に造ろうとしたのか、どうやったらこんな事ができるんだと受け入れようとしていました。そして、この一冊が僕にとって建築に対する新しい価値観を与えてくれたおかげで、建築への興味が深まったのだと思います。
それから20年以上経ち、現在、設計事務所として個人や会社から依頼を受けて設計させて頂いたり、母校の大学で非常勤を務めさせて頂いて、多くの方々と出会う機会があります。
お仕事で出会う方の殆どが建築に関しては素人ですし、大学で担当しているのは2年生なのでまだ知識は浅いです。今度は私との出会いがクライアントや生徒らにとって建築に対する新しい価値観を持つきっかけになるよう、研鑽を積みたいと思います。
ダニエル・リベスキンドの特集