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連載記事

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職人タイムス

現場で働く職人さんを紹介する「職人タイムス」

第5回目は、店舗や住宅のオーダー家具を作る
高木家具製作所(富山市)代表の高木博之さんです。
その人柄を表すような優しく、ナチュラルな作品を数々生み出す高木さんに、家具職人の本音を伺いました。
職人タイムス vol.5  高木家具製作所 高木博之さん
富山市中大久保にある高木家具製作所

富山市中大久保にある高木家具製作所

1階が工房。年季の入った木工機械がズラリ

1階が工房。年季の入った木工機械がズラリ

ラボ

この広い工房で一人で作業されているんですか?

高木さん

はい。たまに創業者の父に手伝ってもらうこともありますが、基本は一人でやってます。この工房は父の時代からなので…築42年。夏は暑くて、冬はめちゃくちゃ寒い。真冬もストーブ1台で作業しているので、かなり過酷です(笑)。朝7時には仕事をスタートして、夜は家族で一緒にご飯を食べるようにしています。残業があれば、明け方から作業を始めることもありますね。

夕方、お子さんを迎えに行くのは高木さんの役目

夕方、お子さんを迎えに行くのは高木さんの役目

ラボ

高木さんは学生時代、機械の勉強をされていたとか?

高木さん

そうですね。富山高専の機械科に入って、技科大(国立長岡技術科学大学)に編入しました。 それこそ“ザ・理系”の勉強をしていて、大学院まで行きました。そのまま大手の電機メーカーに就職して、京都で半導体の設計をやっていました。

ラボ

家具職人とは無縁ですね…。

高木さん

それなりにやりがいもあったし、楽しかったんですけど、寝ないで頑張って作っても1年でどんどん新しいものに変わっちゃう。なんか寂しいなと感じて、「もっともっと長く使ってもらえるものを作りたいな」という想いが強くなってきたんです。

穏やかでいてロジカル。トーク力も高木さんの魅力

穏やかでいてロジカル。トーク力も高木さんの魅力

ラボ

そこから方向転換されたわけですね。

高木さん

手を使って物を作ることが好きでしたし、元々家具づくりは家業だったので幼い頃から手伝っていた記憶は常に頭にはあって…。父の仕事こそ、永く愛されるものづくりなんじゃないかなと。そこで一念発起して、大阪の職業訓練校に1年通うことにしました。

道具も大事に長く使う

道具も大事に長く使う

ラボ

学校ではどんな勉強を?

高木さん

職業訓練校なので、16歳から60代までやる気のある人、ただ遊びに来ている人、すごくバラエティに富んでいて面白かったです(笑)。僕は始発で学校に行って、ひたすら研ぎの練習を続け、卒業して京都の木工所に入りました。百貨店の家具などを作っている規模の大きい木工所だったので、設計から取り付けまで、一貫して学ぶことができたのはとても良い経験になりました。

学校時代はひたすらストイックに腕を磨いた

学校時代はひたすらストイックに腕を磨いた

ラボ

そこから実家の高木家具製作所を継ぐ決断をされたんですね。

高木さん

まだ父もバリバリ働いていたので、お客さんもありがたいことにたくさんいました。ただ、家具の完成形は同じでも職人によって全然やり方が違うので、基本的には父とぶつかってばかり。「そんなやり方で大丈夫か」としょっちゅう口を出されて、「そのやり方は古い」と言い返すという感じでしたね(笑)。

ちょっとずつ自分もいろんな人と出会って直接オーダーしてくれる人が増えてきて、そこで自分の作りたいと思う物を作れるようになっていった感じです。

たとえ親子でも職人としてのこだわりは譲れない

たとえ親子でも職人としてのこだわりは譲れない

ラボ

作品からは、高木さんのこだわりが感じられるものばかりです。

高木さん

元々、北欧家具が好きでしたが、訓練校時代に本で調べたり、自分なりに勉強してちゃんと向き合ったことがベースになっています。そして高校、大学と機械科にいたので、ギミックな物ものが好き。ただおしゃれというのではなく、「機能的なものにしたい」といった想いが僕の考え方です。ちょっとした材料の強度計算や3Dでの設計の仕方など、機械科で学んだことは確実に生きていますね。

機械と向き合い、頭の中のイメージを整理

機械と向き合い、頭の中のイメージを整理

滑らかに仕上がっているか、手で何度も確認

滑らかに仕上がっているか、手で何度も確認

ラボ

家具職人として成功した今でも学ぶことはありますか?

高木さん

次から次と新しい材料が出てくるのでいかに取り入れるか。木の材質や、オイルでも全然仕上がりが違ってくるので試しながら自分なりの正解を見つけていきます。大切にしているのは、触った時のあたり、優しさ、柔らかみ。子供が生まれてから特に丸みがあるものにはこだわっています。軽やかに見せる、というのかな。

そこに奇をてらったデザインはいらないと思っていて、使いやすくて日常に馴染むこと。その上でふと眺めた時に、買ってよかったなと思ってもらえると嬉しいです。

このテーブルとスツールが第5回全国合板1枚作品コンペで 最優秀賞(林野庁長官賞)を受賞

このテーブルとスツールが第5回全国合板1枚作品コンペで 最優秀賞(林野庁長官賞)を受賞

ラボ

これまでツラかったことはありますか?

高木さん

うーん、どうだろう。追い込まれるのが好きなのか、自分で追い込んでいくのが好きなので(笑)、そこまでツラいと感じたことはないかもしれないです。

ラボ

職人としての今後の夢はありますか?

高木さん

家具=無垢材が良い世間一般のイメージがありますが、私はフラッシュ(木で枠を組み、両側に板を貼り合わせたもの)も好き。フラッシュ=大量生産というイメージだけど、反りにも強くて、良いところはたくさんある。見た目と同時に機能性も大事。合板(フラッシュ)の家具の良さを、自分なりに発信していけたらいいなと思っています。

富山市南田町の「花水木の庭」(住居一部)

富山市南田町の「花水木ノ庭」住居一部(撮影:志摩大輔)

大半の家具製作を担当

大半の家具製作を担当(撮影:志摩大輔)

ラボ

家具職人を目指す若者たちにアドバイスをお願いします。

高木さん

いざ仕事になった時には、生産性やコスト計算も必要になってくるので、“自分のやりたいものと違う”という場面が出てくるかもしれません。ただ、そうは思って欲しくないんです。フラッシュはフラッシュの良さがあって、無垢材でもフラッシュも両方作れて一人前。要は適材適所が大事だということ。

かんなの研ぎは、学校時代から一日も欠かさず、毎日やっています。「かんなの研ぎは一生」と言われており、腕の感覚を研ぎ澄ますことが大切。友人やお客さんに「すごく良いものができたね」と言ってもらったり、子供たちから「すごーい!」とか言われたらやっぱり、嬉しいですね。

この“研ぎ”が仕上がりを大きく左右するのだ

この“研ぎ”が仕上がりを大きく左右するのだ

 

工房の2階には、高木さんの奥様がパティシエを務める「高木焼菓子製作所」があり、先日1周年を迎えられました。週2回の営業日には、開店直後にお菓子がすべて完売するほどの超人気店。ここでも、高木家具の雑貨やインテリアが並び、購入することもできます。

店舗のリノベーションはSOLO&MADEILAが手掛けた

店舗のリノベーションはSOLO&MADEILA。1周年イベントには長蛇の列が出来ていたそう

店舗内には高木さんの家具がチラホラと

店舗内には高木さんの家具がチラホラと

高木焼菓子製作所
〒939-2243 富山県富山市中大久保42 2F
OPEN:毎週 金・土曜日 10時~16時
TEL.076-467-5720
https://www.takagi-yakigashi.com
https://www.instagram.com/takagi_yakigashi/

代表 高木博之(たかぎひろゆき)

PROFILE

高木家具製作所

〒939-2243 富山県富山市中大久保42
TEL.076- 468-2604
https://www.takagu.com
https://www.instagram.com/takagu_furniture/

代表 高木博之(たかぎひろゆき)

【生年月日】 1980年6月9日生まれ
【家族構成】 妻、長男、長女
【趣  味】 ランニング。富山マラソンでの記録は、3時間27分。「次は3時間15分切りたいです!」