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連載記事

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ケンチクノワ2

富山を拠点に、県内外で活躍する個性豊かな建築家・建築士10名によるリレーブログ。
テーマに沿って10名の建築家・建築士が建築設計への想いや考えを綴り、バトンを繋ぎます。
第5弾のテーマは「建築設計の楽しさ」です。

※毎週火曜日に掲載

深山知子一級建築士事務所・レトノ

深山(ふかやま)知子(ともこ)


テーマ vol.46建築設計の楽しさ

「建築の楽しさ=世界観」

今回、最後のテーマである「建築設計の楽しさ」についてお話ししたいと思います。

私が考える建築設計の楽しさとは、3次元領域(物理次元)と5次元領域(非物理次元)を意識的に自由に行き来することです。普段、私たちはこれを無意識に行っていますが、意識的に取り組むことが非常に楽しいと感じます。

ここでいう3次元領域とは、地球の法則に基づいた物理次元(二極、二分法、重力など)を指し、5次元領域は感性や感覚的なエネルギーの領域、または潜在的領域のことを指しています。

建築設計を始めた頃、住宅において特に大切な「居心地の良さ」について考え始めました。「居心地の良さ」は個人的な感覚に過ぎませんが、「誰もが」という観点がとても重要だと考えました。

この「誰もが」とは、国や性別、人種を超えた共通の領域に存在するものです。

この共通の理解を得るためには、まず次の3つの要素を考慮する必要があります。
①人の構成要素を知る(Body・Mind・Spirit)
②思想を理解する(西洋・東洋などの哲学や宇宙論)
③意識の構造を知る(顕在意識、潜在意識、潜在意識の中にある個人的無意識と集合的無意識)

私は特に、③にある集合的無意識がとても興味深く、それを大切に考えています。この集合的無意識は「すべての人と繋がっている」という概念と関連しているからです。

例えば顕在化された意識で私が心地良いと感じる空間と、他の人が快適に感じる空間との間には、共通点を見出すのが難しいです。これらは個人の記憶や性格、習慣に大きく左右されているからです。

だからこそ顕在化されたものではなく、集合的無意識を観察することが重要だと感じています。

また建築にとって欠かせない存在である植物について考えてみると、私たちの身体と同じく炭素ベースであり、そのため人間との親和性が非常に高いことが分かります。だからこそ私たちは常に自然を求めているのでしょう。

植物たちは、地球に存在して以来、移動しないという手段を選んだからこそ独自の進化を遂げてきました。彼らは五感に加え、重力や磁場を感知する能力など、15の感覚を持ち、人とは異なるコミュニケーション能力を有しています。

このように、人間の集合的無意識や植物の能力・知性に触れることで、感性や感覚が開かれていきます。そして、3次元領域と5次元領域の行き来の楽しさを実感できるのです。

5次元領域にある感性や感覚を持って3次元領域に建築のエッセンスとしてフィードバックし、それを散りばめることは設計するたびに感じる楽しさなのです。

このようなことを意識的に行っていた建築家として、ルイス・カーンが思い浮かびます。彼の文章は常に哲学的で素敵なものばかりですが、その中の一つに次のようなものがあります。

「煉瓦に問いかけます。『あなたは何になりたいのか』と。煉瓦は答えます。『私はアーチが好きだ』」

この言葉は、次元間の移動という楽しさを端的に表現していると感じます。

これまでの5回のテーマを通じて、建築をさまざまな角度から見つめ直すことができました。また、他の建築家の方々の投稿を楽しく拝見し、私が感じられないような多くの気付きや学びがありました。この場を借りて皆様に深く感謝申し上げます。 

深山知子

PROFILE

深山知子一級建築士事務所・レトノ

富山市桜橋通り3-1
富山電気ビルディング 本館2F
HP:https://fukayama-architects.jp

深山知子

1971年 富山県生まれ
日本大学卒業後、設計事務所を経て
2013年8月 アトリエレトノ一級建築士事務所設立
2018年8月 深山知子一級建築士事務所・アトリエレトノに改名
2023年2月 深山知子一級建築士事務所・レトノに改名