連載記事
テーマに沿って10名の建築家・建築士が建築設計への想いや考えを綴り、バトンを繋ぎます。
第5弾のテーマは「建築設計の楽しさ」です。
※毎週火曜日に掲載
鈴木一級建築士事務所
テーマ vol.47建築設計の楽しさ
「クリエイティビティ:未来を形にする楽しさ」
いよいよ最終回ですね。最後までご覧いただき、ありがとうございます。最終回は「建築設計の楽しさ」についてです。建築設計は単なる作業ではなく、多くの人との関わりを通じてアイデアを形にしていく仕事です。世の中には様々な職業がありますが、建築ほどクリエイティブな仕事は少ないと感じることがあります。
もちろん、どの職業にもクリエイティブな要素は必要ですが、建築が他の仕事と異なるのは、成果が建物という巨大な形で現れることです。白紙の状態から想像し、既存の建物を一新するなど、常に未来を描き続けるこのプロセスは非常にクリエイティブであり、それこそが建築設計の楽しさだと思います。ここでは、建築設計におけるクリエイティブな瞬間を3つ紹介します。
1つ目はデザインする楽しさです。デザインと一口に言っても、建築設計ではクライアントの要望や周辺環境、色、素材、形、コスト、施工方法など、多くの要素が絡みます。私は時々、一度竣工した建物を再度設計したくなることがあります。同じ条件でも異なるアプローチを考えたらどうなるのか、興味が尽きないのです。
建築を設計する上での選択肢は無限にあり、その中から白紙の状態から図面やCGによる検討を行い、アイデアを徐々に形にしていく過程はクリエイティブで、デザインの可能性の広がりを実感します。この魅力があるからこそ、何度でも挑戦したくなるのだと思います。
2つ目は人間関係の構築です。建築設計では多くの人と関わるため、人間関係の構築が重要です。クライアントや施工業者、地域住民とのコミュニケーションからしか、建物は完成しません。
しかし、関係者全員がただ作業をこなすだけでは、街並みは変わりません。私は、関わる人たちにクリエイティブな思考を持ってもらいたく、少しでも楽しい発想を促す「気持ちの良い嫌がらせ」を心がけています。
具体的には、設計から竣工までのプロセスで、関係者が自ら考える機会を設けるよう努めています。指示されるだけでは楽ですが、その反面、思考が停止してしまうからです。クライアントや施工者が創造している瞬間を見ることが、私にとっても非常に楽しく、ワクワクする瞬間です。
3つ目は日常業務の楽しさです。建築設計の業務は、クライアントや施工者との打ち合わせや、事務所での議事録作成、図面作成、現場監理など、正直言って地味な作業の繰り返しです。
私はそんな日常の中でも自分の時間を作るよう心がけています。たとえば、私たちの事務所ではリモートワークが可能ですので、子供や妻とランチを楽しんだり、家で子供の面倒を見ながら仕事をすることもできます。
また、現場近くの好きな飲食店でランチしたいと思えば、打ち合わせの日時を調整したり、食事をしながら打ち合わせを行ったりすることもあります。少し職権乱用かもしれませんが、自分が楽しみながら仕事をすることで、日常をクリエイティブに変えられるよう試行錯誤しています。
建築設計の楽しさは、これらの他にもたくさんありますが、共通するのはそのクリエイティビティです。この楽しさを関係者と共有できるかどうかが、竣工する建物の結果に大きく影響すると考えています。
未来を想像しワクワクできる人、平凡な毎日を楽しめる人は、ぜひ建築設計の道を歩んでみてください。きっと、今よりも楽しい毎日を過ごせることでしょう。それでは、また会う日まで。